10月15日

その祖父の地で、若きオデュッセウスは叔父達と共に猪狩りに赴いたのだった。

τὸν δ᾽ ἀνδρῶν τε κυνῶν τε περὶ κτύπος ἦλθε ποδοῖϊν,
ὡς ἐπάγοντες ἐπῇσαν: ὁ δ᾽ ἀντίος ἐκ ξυλόχοιο (19-444,5)

男達と犬共の足音が彼(猪)のもとにやって来た

そのように狩りしつつ進んできて。彼は塒から出て向き合う

φρίξας εὖ λοφιήν, πῦρ δ᾽ ὀφθαλμοῖσι δεδορκώς,
στ
ῆ ῥ᾽ αὐτῶν σχεδόθεν: ・・・ (19-446,7)

粗毛を一斉に逆立てて、目で火を睨みながら

彼らのすぐ前に立ちはだかった・・・

「男達と犬共の足音が彼(猪)のもとにやって来た」は詩人が猪になりきったような詩行だ。猪の視点(聴点というべきか)から叙している。

「粗毛を一斉に逆立ててφρίξας εὖ λοφιήν」や「目で火を睨みながらπῦρ δ᾽ ὀφθαλμοῖσι δεδορκώς」も間近に目にするようだ。「目で火を睨みながら」は「火の様な眼光を放って睨みながら」ということだろう。

昨日引用の一節はオデュッセウスの名の由来を語っていた。もとより後付けにしてこじつけの語源説だろうが、「オデュッセウス」とは謎めいた響きを持った名で薄暗い、不気味なところがあり、「憎まれて(オデュッサメノス)」の形容とは通ずるところがある。

ところで、「オデュッセウスὈδυσσεύς」が「ユリシーズUlysses」と同じ人物だとは初めて聞いた人は信じないだろう。しかし紛れもなく同一人物だ。英語のUlysses(ユリシーズ)はラテン語のUlixes(ウリクセース)に由来する。ではこのUlixesはどこから来たかというと、ギリシア語のὈδυσσεύςの変化形Οὐλίξης(ウーリクセース)からだ。

元々口頭で伝承されてきた名なのだから、お国訛りが反映するのは当然のことだ。