9月29日
オデュッセウスは女召使い達に代わって、燭台の脇に立ち火の世話をする。求婚者達の一人エウリュマコスがそれを見て嘲って言う。
ἔμπης μοι δοκέει δαίδων σέλας ἔμμεναι αὐτοῦ
κὰκ κεφαλῆς, ἐπεὶ οὔ οἱ ἔνι τρίχες οὐδ᾽ ἠβαιαί. (18-354,5)
それにしても私には松明の光が彼から来ていると思えてならぬ
彼の頭から(来ていると)、というのも彼にはほんの少し毛もないんだからな
どうも禿頭は当時から揶揄の的であったらしい。そして更に悪態をつくエウリュマコスにオデュッセウスは言う。
αἶψά κέ τοι τὰ θύρετρα, καὶ εὐρέα περ μάλ᾽ ἐόντα,
φεύγοντι στείνοιτο διὲκ προθύροιο θύραζε. (18-385,6)
(オデュッセウスが帰館したら)すぐさまお前にはずいぶん広いはずのこの扉が、
戸口から外に逃げる(お前)にさぞかし狭い(ように見える)であろうよ
悪態をやり返したわけだ。オデュッセウスは悪態もうまい。
朝市見学。チーズ屋や肉やの品数が凄い。賑わってもいる。ここで災難に遭う。犬の糞を踏んだのだ。思わず「糞」といってしまったが、考えてみればこの場合ほど「糞」がぴったりの状況は考えようがない。こういう時フランス人も、よほど育ちが良くない限り、Merde!と叫ぶのではないか。今日のくだりもそうだが、ホメーロスは悪態や罵詈雑言の宝庫だ。こんな時登場人物はどう言っているのか。これもあまり上品なテーマではないが宿題としよう。
犬の糞に意気阻喪したわけではないが、夕方は宿所で少し休む。青リンゴを囓る。酸味が利いていて旨い。
三階の部屋からホテル裏手の小さな広場が見下ろせる。なにやら立ち話しする三四人、バゲットを手に買い物帰りの婦人、勤め帰りと覚しき人、レストランのメニューに見入る二人連れ、皆それぞれだ。教会の鐘が聞こえる。
裏壁の蔦や崩落防ぐべく 拙作