9月11日
求婚者達の頭領格アンティノオスは豚飼を責める。「なんでこんな奴を連れてきたんだ、それでなくてもここには浮浪者や乞食が大勢いるというのに」と言って。それに豚飼は応える。「誰が自ら出かけていってよそから呼んでくるでしょうか・・・」
ἄλλον γ᾽, εἰ μὴ τῶν οἳ δημιοεργοὶ ἔασι,
μάντιν ἢ ἰητῆρα κακῶν ἢ τέκτονα δούρων, (17-383,4)
余計に(呼んでくるでしょうか)、公の役に立つ者でなければ
予言者とか、病を癒やす医者とか、木を切る大工とか
ἢ καὶ θέσπιν ἀοιδόν, ὅ κεν τέρπῃσιν ἀείδων;
οὗτοι γὰρ κλητοί γε βροτῶν ἐπ᾽ ἀπείρονα γαῖαν: (17-385,6)
あるいは歌って人を楽しませる霊感を得た伶人とか(でなければ)
というのも彼らは人間の中で果てしない土地で呼び寄せられる者ですから
「公の役に立つ者δημιοεργοὶ」として、「予言者μάντιν」「医者ἰητῆρα」「大工τέκτονα」、そして最後に「伶人ἀοιδόν」が挙げられている。ホメーロスはその伶人の中で傑出した一人だったはずだ。そういう伶人を産んだ土壌、それを認めた社会、それを楽しみ評価し残した人々、いずれも大したものだ。
「公の役に立つ者δημιοεργοὶ」として認められる特殊技能を有した専門家達、現代なら誰だろう。「予言者μάντιν」は入らないだろう。それに取って代わって入るとしたら科学者か。「医者」は入るとして、「大工」は高度技術者に衣替えして入るだろう。「伶人」は詩人、芸人、芸術家ということになろうが、こと「公の役に立つ者」か否かということになると難しいだろう。