8月23日
豚飼が町に向かうとアテーネーが戸口に現れる。
οὐδ᾽ ἄρα Τηλέμαχος ἴδεν ἀντίον οὐδ᾽ ἐνόησεν,
οὐ γὰρ πω πάντεσσι θεοὶ φαίνονται ἐναργεῖς, (16-160,1)
しかしテーレマコスは目の前に見ても気づかなかった
というのは神々は全ての者にはっきり姿を見せるわけではないので
ἀλλ᾽ Ὀδυσεύς τε κύνες τε ἴδον, καί ῥ᾽ οὐχ ὑλάοντο
κνυζηθμῷ δ᾽ ἑτέρωσε διὰ σταθμοῖο φόβηθεν. (16-162,3)
そしてオデュッセウスと犬達とには見えた、しかし吠え立てることはなく
鼻を鳴らしながら小屋の反対側に逃げていった
「オデュッセウスと犬達とには見えた」というのは面白い。オデュッセウスと犬が一緒になっているのだから。もっともアテーネーの意図はテーレマコスに見えないようにすることだったのだから、犬達が特別待遇されたわけではないが。
その時の犬達の素振りは更に面白い。神の威光は犬も感じるものらしい。「ὑλάοντο [hyulaonto] 吠え立てた」も「κνυζηθμῷ [knyuzêthmô] 鼻を鳴らしながら」も擬声語だろう。
このὑλάοντοとκνυζηθμῷ、それぞれどのような鳴き声だろうか。難しいが敢えて想像してみた。
ὑλάοντο [hyulaonto] の方は威嚇などのワンワン、キャンキャンに近いのだろう。狂言などで出てくる「ビョウビョウ」もこの組だ。一方、κνυζηθμῷ [knyuzêthmô] はいかにも鼻を鳴らす感があり、怖れや甘えのクンクンに近いのではなかろうか。