8月4日


テーレマコスと同行のペイシストラトスがさていよいよ出立という時に、鷲が右手に前兆として現れる。鵞鳥を蹴爪に掴んで翔って去ったのだ。鳥が右手を飛ぶのは吉兆とされている。そこでペイシストラトスがメネラーオスに、この前兆を判じて下さいと頼む。


ὣς φάτο, μερμήριξε δ᾽ ἀρηΐφιλος Μενέλαος,
ὅππως οἱ κατὰ μοῖραν ὑποκρίναιτο νοήσας. (15-169,70)

そのように(ペイシストラトスが)言うと、アレースの伴メネラーオスは思案した

いかに然るべく見分け判じたものかと


τ
ὸν δ᾽ Ἑλένη τανύπεπλος ὑποφθαμένη φάτο μῦθον: (15-171)

すると彼に先んじて裳裾引くヘレネーが話し始めた


「これはオデュッセウスが求婚者達に復讐を遂げる前兆です」と。慎重なメネラーオスに対して、ヘレネーの才気煥発振りが際立っている。

『イーリアス』における運命に従容と従う気高いヘレネー、先の『オデュッセイアー』第四歌におけるいささか軽薄なヘレネー(2月16日の項)、ここにはそれらとはまた違った新しいヘレネー像がある。


暑さをしのぐよすがにもと、岩波新書の『古川柳』山路閑古を読み始めた。面白い。前々から知っていた本だがつい読まずじまいだった。さすが川柳人だけあって文章も簡潔平明、機知も味わいもある。

その中で、川柳の名前の由来ともなった創始者柄井川柳の辞世句を初めて知った。

 凩やあとで芽を吹け川柳

明るくて拘りがない、それでいて自ら打ち込んだ川柳への思いもこもっている。辞世句の名句ではなかろうか。