7月21日
オデュッセウスが語るトロイア遠征に始まる遍歴(もちろんそれはクレタ王の子としての遍歴であり作り話ではあるのだが)は歴史地理的に興味深い。トロイアからクレタに帰って家族水入らずの期間は一ヶ月のみ、すぐアイギュプトス(エジプト)に向け旅立つ。
πεμπταῖοι δ᾽ Αἴγυπτον ἐϋρρείτην ἱκόμεσθα, (14-257)
そして5日目にはよき流れのアイギュプトスに到着しました
その地で戦いに敗れるが王に保護される。そこに、ポイニーケー(フェニキア)の男がやってくる。
δὴ τότε Φοῖνιξ ἦλθεν ἀνὴρ ἀπατήλια εἰδώς,
τρώκτης, ὃς δὴ πολλὰ κάκ᾽ ἀνθρώποισιν ἐώργει: (14-288,9)
そのときだポイニーケー(フェニキア)の詐欺師男がやってきたのは
(そいつは)悪賢い奴で、人々に実に多くの悪事を働いたのだった
フェニキア人は海上交易で大いに活躍していた。有能な商売人にはどうしてもあざといとのレッテルがつきまとうものらしい。
そのフェニキアも滞在一年でリュビエー(リビア)に向かうことになる。
東地中海の地図を広げてみると、クレタ島がほぼ中央にある。トロイアはその北、エジプトは南東、フェニキアは今のレバノンだから東、リビアは南だ。そして今いるイタケーは北西に位置する。オデュッセウスは作り話を東地中海世界全体を視野に入れて組み立てている。
老母と故郷の方言の話になった。何でも、世話をしてくれている人に思わず方言を使ったら、その人がすごく興味を持ってもっと教えてくれと言われたのだそうだ。老母の故郷は瀬戸内海の島なのだ。私は住んだことはないが何度も遊びに行くうちに自然に耳に馴染むようになった。忘れ難いのがいくつもある。
いぎ:魚の小骨。喉に刺ささるのは今でも(小骨ではなく)「いぎ」だ
のんた:~(で)の、あんた。これは祖母の口癖だった。
傍で聞いていると一分間に何回も「のんた」「のんた」と言っていた。
はぶてる:ふてくされる。子供のふくらませたほっぺたが目に浮かぶ。
わや:めちゃくちゃ。これも「わやじゃ」と言う人の呆れた表情が目に浮かぶ。