7月8日
しかしアテーネーはオデュッセウスに対して悪感情を抱いているのでは決してない。それどころか、
ἀλλ᾽ ἄγε, μηκέτι ταῦτα λεγώμεθα, εἰδότες ἄμφω
κέρδε᾽, ἐπεὶ σὺ μέν ἐσσι βροτῶν ὄχ᾽ ἄριστος ἁπάντων
しかしもうそんなことを言うのはよしましょう、私たちは双方
術策は得意同士。というのもあなたは全ての人間の中で秀で
βουλῇ καὶ μύθοισιν, ἐγὼ δ᾽ ἐν πᾶσι θεοῖσι
μήτι τε κλέομαι καὶ κέρδεσιν: ・・・
謀と言葉に(秀で)、私は神々皆の中で
智恵と企みで名を知られているのですから・・・
と、まるで同志、戦友扱いだ。人間と神の間でオデュッセウスとアテーネーの間ほど親密さと信頼に貫かれている例は他にない。
昨日は老母に言われるままに実家の玄関脇の木の剪定をやった。その木は「隠れ蓑」という面白い名の木で、確かに厚い葉は一杯に茂って身を潜めるに相応しい。「隠れ蓑」は日本の民話でおなじみだが、似たものがギリシア神話にもある。「冥王の兜」と呼ばれ強力な武器だった。なるほど敵に見られないことは戦いにおいて圧倒的に有利だ。
ホメーロスでも『イーリアス』に出てくる。アテーネーが被ったのだった。
δῦν᾽ Ἄϊδος κυνέην, μή μιν ἴδοι ὄβριμος Ἄρης. (5-845)
冥王(アイデース)の兜を被った、勇猛のアレースに見られないようにと
冥王の名Ἄϊδηςが「否定のἀ+ἴδης (見る)」に音が共通しているので、「冥王の武器=(隠れ蓑ならぬ)隠れ兜」とされたのだろう。