7月2日
オデュッセイアの語りを聞き終えたアルキノオス王は、居合わせた要人達に向かって、客人への最後の贈り物をしようと呼びかける。
ἀλλ᾽ ἄγε οἱ δῶμεν τρίποδα μέγαν ἠδὲ λέβητα (13-13)
さあ彼に大きな三脚鼎と鍋とを贈ろうではないか
ἀνδρακάς: ἡμεῖς δ᾽ αὖτε ἀγειρόμενοι κατὰ δῆμον
τισόμεθ᾽: ἀργαλέον γὰρ ἕνα προικὸς χαρίσασθαι. (13-14、5)
各人が(贈ろうではないか)、我々はまた人民から集めて
埋め合わせをしよう、一人で無償の贈り物をするのは難儀である故
王ともあろうものが随分と世知辛いことを言うものだ。しかし逆にいうと、これは王の宴席に与る要人達もそれほどの財産を持っていないことの証左だろう。そもそも、王が自分一人で贈ろうとしないのだから、王も要人達、ひいては一般民衆から隔絶した財産を持っていないようだ。格差社会ではないのだ。そう考えるとこの言葉もほほえましい。
ほほえましいといえば、少し後に続く詩行はもっとそうだ。贈り物の三脚鼎と鍋が船に積み込まれる場面だ。
καὶ τὰ μὲν εὖ κατέθηχ᾽ ἱερὸν μένος Ἀλκινόοιο, (13-20)
そして貴いアルキノオス(の力)がそれらをしかるべく納めた
αὐτὸς ἰὼν διὰ νηὸς ὑπὸ ζυγά, μή τιν᾽ ἑταίρων
βλάπτοι ἐλαυνόντων, ὁπότε σπερχοίατ᾽ ἐρετμοῖς. (13-21,2)
自らが船を巡り櫂座の下に(納めた)、一行の者の誰も
櫂でもって一心に漕ぐとき邪魔にならぬようにと
王自らがそこまで世話を焼くとは、王が庶民的なのか、パイエーケスの社会が民主的なのか。
昨日のテレビでは大英博物館シリーズの古代ギリシア編をやっていた。特にギリシア彫刻の彩色についての部分は面白かった。ギリシア彫刻は白色だとの通念があるが、元々は彩色されていた。「ギリシア彫刻は白」は実は近代西欧によって作られたイメージだ、と。
画面に出てきた復元想像図は感心できなかったが、それは大いにあり得ると思う。盲目であったとの伝説があるホメーロスの詩編も色は豊富だ。今日読んだところでもῥοδοδάκτυλος Ἠώς(薔薇色の指持つ暁の女神、13-18)があった。