7月1日


第十三歌に入る。

新しい歌に入るときはいつも気持ちも新たになるのだが、今回はまた格別だ。それは折り返し点を過ぎて後半部に入るということもあるがそれだけではない。物語自体大きく動き、新たな展開が始まりそうな気配があるからだ。


第十三歌は次の詩行から始まっている。


ὣς ἔφαθ᾽, οἱ δ᾽ ἄρα πάντες ἀκὴν ἐγένοντο σιωπῇ,
κηληθμ
ῷ δ᾽ ἔσχοντο κατὰ μέγαρα σκιόεντα. (13-1,2)

このように(オデュッセウスが)言うと、彼ら(パイエーケス人達)は静まりかえった

小暗き広間中が魅惑にとらえられて


そうだった。忘れかけていたが、今まで読んでいた話は(そしてホメーロスの聴衆が聴いていた話は)アルキノオス王達パイエーケス人の前でオデュッセウスその人が語る自身の漂流譚だったのだ。


ここで詩編前半十二歌の大まかな構成を振り返っておこう。

第一~四歌  テーレマコスの物語

第五歌    カリュプソー、オデュッセウスを島から送り出す

第六~八歌  パイエーケス人の島に漂着してからのオデュッセウス

第六歌 ナウシカアーとの出会い

第七歌 アルキノオス王の館、帰郷を助けるとの約束を得る

第八歌 伶人デーモドコスの歌、オデュッセウス素姓明かす

第九~十二歌 オデュッセウス自身がトロイア戦争終結以降の漂流譚を語りはじめる

第九歌  巨人キュクロープスの島

第十歌  風神アイオロスの島、魔女キルケーの島

第十一歌 冥界巡り

第十二歌 神女セイレーン、怪女スキュレー、大渦カリュブディス


そして、第十二歌の最後でカリュプソーの島に漂着したことが語られたのだった。こうしてオデュッセウスの過去の漂流譚は語り終えられ、新たな展開が準備されたことになる。第十三歌は第九歌冒頭の場面、即ち詩編における「現在」から始まる。