6月17日
次に目撃するタンタロスの業苦も凄まじい。
「そしてタンタロスが辛い苦しみを受けているのを見ました。彼は水の中に立ち、水は顎のところに近づいている、そこで渇きを癒やそうとし、飲まんとしても水に達することが出来ない、というのは、その老人が飲もうとして身を屈める度に、その度ごとに水は吸い込まれて失われ、足下まで黒き地面が現れる、神が涸らしてしまうのでした」(11-582~587)
「また、葉高き木々が上から果実を垂らしています、梨や、石榴や、輝く林檎や
甘き無花果や生い茂るオリーブやを。老人がそれを捉えようと手を伸ばすときにはいつも、風がその果実を影ある雲の彼方へと投げやってしまうのでした」(11-588~592)
何か悪夢を見ているような感覚に襲われる。
前者の「その度ごとに」の詩行を取り出してみると
ὁσσάκι γὰρ κύψει᾽ ὁ γέρων πιέειν μενεαίνων,
τοσσάχ᾽ ὕδωρ ἀπολέσκετ᾽ ἀναβροχέν, ἀμφὶ δὲ ποσσὶ (11-584,5)
というのは、その老人が飲もうとして身を屈める度に
その度ごとに水は吸い込まれて失われ、足下まで(黒き地面が現れる)
そして、後者の「ときにはいつも」の詩行はこうだ。
τῶν ὁπότ᾽ ἰθύσει᾽ ὁ γέρων ἐπὶ χερσὶ μάσασθαι,
τὰς δ᾽ ἄνεμος ῥίπτασκε ποτὶ νέφεα σκιόεντα. (11-591,2)
老人がそれを捉えようと手を伸ばすときにはいつも、
風がその果実を影ある雲の彼方へと投げやってしまうのでした
「度に、その度ごとに ὁσσάκι、τοσσάχ᾽」や「ときにはいつもὁπότ᾽ δ᾽」で表される反復、それも必死で成さんとすることがもう少しで成就しそうなところで不可能となる事態の反復、これはまさに悪夢だ。
今日元町に所用で出かけたついでに、近くのガレット屋に寄ってみた。前々から気になっていたのだが行く機会がなかったのだ。店の造りは洒落ているしガレットも旨かった。
ガレットの原料はソバ粉だ。ガレットの本場フランスでは原料のソバはサラサンsarrasin(=サラセン)という。それからも想像できるが、ソバの起源はユーラシア大陸中央部といわれる。ユーラシア大陸中央部から西はヨーロッパ、東は日本まで伝播したのだろう。東西は繋がっている。
店長の話では、高級なそば粉必ずしも旨からず、らしい。元々救荒作物だったのだし、そういうこともあるのだろう。