6月3日
次にオデュッセウスが出会った亡者は死んだ母親だった。彼がトロイア遠征に旅立った時はまだ生きていた。オデュッセウスはそれと気づき悲しむが、亡者の方は記憶を失っていて気づかない。
その次に現れたのが、予言者テイレシアースだった。彼の託宣を聞くことこそ今回の冥界行きの目的でもあった。その予言者は「ゼウスの裔、ラーエルテースの子、知謀に長けたオデュッセウスよ」と呼びかけ、こう問う。
τίπτ᾽ αὖτ᾽, ὦ δύστηνε, λιπὼν φάος ἠελίοιο
ἤλυθες, ὄφρα ἴδῃ νέκυας καὶ ἀτερπέα χῶρον; (11-93,4)
一体何故、不幸なる者よ、太陽の光を去って
やってきたのか、わざわざ亡者達や喜びなき地を見に
それはそうだ、誰が好きこのんで冥界などに来るだろうか。
そして、予言者は血を飲んで語りはじめる。テイレシアースは冥王の妃のはからいで亡者としては例外的に知性を保っていたのだが、血を飲むことがより確かな予言を保証するのだ。
オデュッセウスの帰郷を妨げているのは海神ポセイダーオーンだ、それは、海神の息子キュクロープスがオデュッセウスによって盲にさせられたことを怒っているからだ、と語る。続けてこう言う。
ἀλλ᾽ ἔτι μέν κε καὶ ὣς κακά περ πάσχοντες ἵκοισθε, (11-104)
しかしまだ、そうではあるけれども、苦難を蒙りつつも帰国するであろう
「しかしἀλλ᾽」「まだ ἔτι」「ではあるけれどもκαὶ ὣς」「つつもπερ 」、ここまで逆説、留保、譲歩が並ぶことは珍しい。オデュッセウスを待ち受ける苦難の大きさ、厳しさを象徴する詩行だ。
近所の人が、花壇の花を植え替えるので今咲いている花を「よければどうぞ」と言う。厚意に甘えてもらってきた。ひらひらした唇のような黄色の花で、名は金魚草。確かに花びらは金魚の泳ぐ様に似ている。歳時記で調べたら夏の季語としてあった。
金魚草うしろ鏡に帯むすぶ 福川ゆうこ