5月24日
偵察の一隊は館に入り、キルケーの饗応を受ける。しかしそれは罠だった。キルケーは食物に魔薬を混ぜたのだった。
「食べ物に恐ろしい魔薬を混ぜたのでした、故郷のことをすっかり忘却するようにと。そしてこれを与えて皆が飲むやいなや、杖で叩き豚小屋に閉じ込めてしまいました。すると彼らは、頭も声も毛も豚のそれになったのです、姿形までも。ただ心だけは以前と変わらずにいました」(10-235~240)
そして、
ὣς οἱ μὲν κλαίοντες ἐέρχατο, τοῖσι δὲ Κίρκη (10-241)
そのようにして彼らは泣きながら閉じ込められました、その彼らにキルケーは
何をやったかというと、
πάρ ῥ᾽ ἄκυλον βάλανόν τε βάλεν καρπόν τε κρανείης
ἔδμεναι, οἷα σύες χαμαιευνάδες αἰὲν ἔδουσιν. (10-242,3)
椎の実や樫の実や山査子の実などを与えました
食べるようにと、それら地に寝る豚の常食としている物を
「泣きながらκλαίοντες」とは残酷なまでの皮肉だ。「心は変わらない」以上胸張り裂ける気持ちで泣いたに違いないが、それが「ブーブー」としか聞こえなかったのだろうから。更に、「椎の実や樫の実や山査子の実などを与えました」もそうだ。体の方は豚である以上それらを我にもあらず貪り食ってしまうのだろうから。
最寄りの駅の近くに、紫と白の花が同時に何十輪も咲いた一本の木がある。名はニオイバンマツリ。毎年今頃咲いている。紫と白の色の対照が鮮やかだ。もっとも、同時にといったが、一輪毎に見ると最初は紫で二三日で白に変わるのだ。英名Yesterday-today- and-tomorrowはその変化に由来しているのだろう。「浮気な人」の花言葉もまた。