5月21日


 キルケーの国で偵察に出たオデュッセウスは、帰りがけに鹿を仕留める。その後の叙述は実に精彩に富んでいる。


「そこで私は枝と蔓とを引きちぎってきて、両端から綯って一尋ほどの綱を作り、恐ろしく巨大な鹿の足に結びつけたのでした。そして、首筋から(引き担ぎ)下げて船へと運んでいきました、槍で杖突ながら。というのはとても肩にかけて片手で運ぶのは無理だったからです、全く巨大な獣でしたから」(10-166~71)


πεῖσμα δ᾽, ὅσον τ᾽ ὄργυιαν, ἐυστρεφὲς ἀμφοτέρωθεν (10-167)

両端から綯って一尋ほどの綱を

とか、

βῆν δὲ καταλοφάδεια φέρων ἐπὶ νῆα μέλαιναν (10-169)

首筋から(引き担ぎ)下げて黒き船へと運んでいきました


の「καταλοφάδεια φέρων首筋から(引き担ぎ)下げて運んだ」とかは特にそうだ。

綯った綱で鹿の四肢を縛りあげ、それを自分の首に掛け、首筋から背中に背負う形で運んだのだろう。頭ではなく身体で読むような感覚がする。


 金環日蝕。曇り空だったが、運良く晴れ間からなんとか見ることが出来た。

新聞夕刊のコラムにeclipse(日蝕)の語源はギリシア語だと出ていた。これは知らなかった。調べてみるとἔκλειψις [ekleipsis](放棄、消失、蝕)があった。ἐκ(外へ)+λείπω(残す)で出来た複合語だ。ἐκλείπω(外へ残す)と「蝕」、離れているようだが、放棄⇒消失⇒蝕とたどるとつながりが見えてくる。

ἔκλειψιςの語はホメーロスに使用例はない。日蝕を思わす場面もなかったと思う。