5月18日


 オデュッセウスが眠っている間にまずいことが起こる。

仲間達は、首領のオデュッセウスは分捕品の宝物を沢山持って帰るのに俺たちは、と互いに不平を言い始める。


ληίδος, ἡμεῖς δ᾽ αὖτε ὁμὴν ὁδὸν ἐκτελέσαντες
ο
ἴκαδε νισσόμεθα κενεὰς σὺν χεῖρας ἔχοντες: (10-41,2)

分捕品の(宝物を)、それに引き替え俺たちは同じ旅をしてきたのに

手ぶらで家に帰ろうとしている

ὣς ἔφασαν, βουλὴ δὲ κακὴ νίκησεν ἑταίρων: (10-46)

このように彼らは言うと、仲間達のその悪しき意見が勝ったのでした


そして彼らは例の「風の袋」に目をつけ、何が入っているのかと開けてしまう。瞬く間に一行の船は元のアイオロスの国に押し返される。

前にも似たような場面があった。首領は絶対的権威、権力で君臨していたのではなかった。不平不満もあった。言うことをきかないこともあったようだ。上記のように僻みまであったとすると、長旅において一行の管理統率は容易ではなかったに違いない。


ギリシアは再選挙だ。その選挙管理内閣の暫定首相に任命されたのはピクラメノス氏だ。その彼がジョークで、私の名Πικραμμενος(辛い)は役割にピッタリだといったそうだ。

ホメーロスにはπικραμμενοςの形はないが、同根、同義のπικρός(辛い、苦い)は出てくる。『オデュッセイアー』でも既に引用した詩行にあった。

πικρὸν ἀποπνείουσαι ἁλὸς πολυβενθέος ὀδμήν (4-406)

深海の鼻を衝く悪臭を吐き出している

アザラシの放つ臭いの形容だ。πικρὸνは普通「鋭い、苦い、容赦ない」という意だからかなりの悪臭だったのだ。

『イーリアス』では弓矢の形容としてよく使われているが、出産時の「辛い陣痛πικρὰς ὠδῖνας」(11-271)の詩句もあった。ピクラメノス氏の「辛さ」も、ギリシア再生の産みの苦しみであってくれればと思うのだが。