5月8日
もうひとつ「勘違いや思い込み」に関連して、この機会に、以前この「日録」で犯した間違いをお詫び訂正したい。
ホメーロスの詩行ではないのだが、3月8日の項で「かかあ殿などど元旦やさしがり」という川柳を引いた。これが間違っていた。正しくは、
かかあ殿などど元旦やさしく出
だ。「やさしく出」といった呼吸、これぞ川柳だ。「やさしがり」では全く駄目だ。面目ない。
オデュッセウスは巨人に、ゼウスに守護される嘆願者として庇護を求める。巨人は「神々など気にしない、俺の方が強いのだから」と言って全く聞く耳を持たない。
巨人はオデュッセウスに問う。「ここへ来たとき船はどこに泊めて置いたか」と。
ὣς φάτο πειράζων, ἐμὲ δ᾽ οὐ λάθεν εἰδότα πολλά,
ἀλλά μιν ἄψορρον προσέφην δολίοις ἐπέεσσι: (9-280,1)
探ろうとしてそう聞きました。しかし万事心得ている私に(魂胆を)気付かれずにはすみません
私は狡猾な言葉で応えて彼に言ったのです
船はポセイダーオーンによって壊された、と。
「探ろうとしてπειράζων」とある。巨人は船に他の仲間がいるか、いればつかまえてこよう、めぼしい物を持ってきてないか、あれば我が物にしようとの魂胆だったのだろう。
「探ろうとしてπειράζων」、「気付かれずに(~した)λάθεν」、「心得ているεἰδότα」、「狡猾なδολίοις」、いずれも駆け引きや嘘に関わる語彙だ。
オデュッセウスは部下を失う。巨人に食われたのだ。夕食時に二人、翌朝二人。腕力ではオデュッセウスといえども巨人の敵ではない。しかし駆け引きや嘘、悪智恵では負けないはずだ。