5月5日
オデュッセウス達は対岸の島からキュクロープスの住む地に渡る。そこにはとてつもない巨人が一人洞窟に住んでいる。
「一人で離れて家畜を飼っていた。他の者と交らうことなく離れて悪しきことを企んでいる。姿は驚くべき巨体で、とても五穀食う人間とは思えない、諸峰から一つ抜きん出た高峰の鬱蒼たる頂きの如くであった」(9-188~192)
最後の二行はこうだ。
ἀνδρί γε σιτοφάγῳ, ἀλλὰ ῥίῳ ὑλήεντι
ὑψηλῶν ὀρέων, ὅ τε φαίνεται οἶον ἀπ᾽ ἄλλων. (9-191,2)
五穀食う人間とは(思えない)、鬱蒼たる頂きの如く
諸峰から一つ抜きん出た高峰の(鬱蒼たる頂きの)如くであった
熊の様な大男とはいうが、「鬱蒼たる頂き ῥίῳ ὑλήεντι」の如きとは大胆だ。動物の比喩を超えて自然になぞらえるのはホメーロス的だ。男もとてつもないが、比喩も劣らずとてつもない。
とここまで書いて、日本語に「雲を衝く」という表現があることに気付いた。「雲を衝くばかりの大男」、これは直接自然になぞらえているわけではないが、聳え立つ山のイメージが見え隠れしているから、ホメーロスの比喩に近いようだ。