5月2日
オデュッセウスはトロイアを離れて以後の漂流の次第を語り始める。
一行は先ずキコノス人達の地を攻略する。そして
ἔνθ᾽ ἦ τοι μὲν ἐγὼ διερῷ ποδὶ φευγέμεν ἡμέας
ἠνώγεα, τοὶ δὲ μέγα νήπιοι οὐκ ἐπίθοντο. (9-43,4)
その時私(オデュッセウス)は部下達に足早に引き上げるよう
命じたのだが、愚かな奴らは従わなかった
一行は当然オデュッセウスが指揮官だったはずだ。指揮官の命令に従わなかったということになる。ちょっと想像しにくいことだが、この詩編のこれからの箇所でも同様あったと思う。そういえば『イーリアス』でも、アキレウスが戦線離脱していたとき部下達が不平を言っていたというくだりがあった。どうも指揮官といえども専制的なものでなく、絶対権力を揮っていたのではなかったようだ。
留まっている内に案の定、キコノス人達が援軍を呼び再び戦闘となる。戦況は昼頃までは拮抗しているが、
ἦμος δ᾽ ἠέλιος μετενίσσετο βουλυτόνδε, (9-58)
太陽が傾き牛を軛から放つ時刻になると
オデュッセウス達は潰走させられる。
「牛を軛から放つ時刻βουλυτόν」は「βοῦς牛+λύω放つ」だから直訳だ。戦闘の叙述にも人々の生業が垣間見える。
近年とんとツバメを見ない。しかしそう思っていたら、今日会った人から「横浜にもいる、職場のビルに今年も帰ってきている、きっと六月頃には雛が孵るだろう」と聞いた。
そしてまた「どうもツバメはあえて人間の近くに巣を作るものらしい、蛇や鼬などの天敵から身を守るために」とも。なるほど、ツバメは害虫も食べてくれるし縁起のいい鳥ともされているから、この間のクマノミと磯巾着のようにツバメと人間は共生関係にあるわけだ。
そこで、ホメーロスにはツバメが出て来たかなと調べてみた。『オデュッセイアー』に二箇所あった。
「オデュッセウスが右手で弓弦を試すと、それはツバメの声音にも似て美しい音を立てた」(21-410,1)
「アテーネーは飛び上がって広間の煤けた天井にとまった、ツバメさながらの姿で」(22-239,40)
いずれもツバメの特徴を髣髴させている。