4月21日
伶人デーモドコスが歌うのは「アレースと女神アプロディーテーの逢い引き」の段だ。アプロディーテーが夫へーパイストスの目を盗んで密通した話だ。
密通の事実を知ったへーパイストスは怒りに燃え、密会の現場を捕らえるべく「破りも解きもならぬ」鎖の網鍛造に取りかかる。へーパイストスは鍛冶の神なのだ。
βῆ ῥ᾽ ἴμεν ἐς χαλκεῶνα κακὰ φρεσὶ βυσσοδομεύων,
ἐν δ᾽ ἔθετ᾽ ἀκμοθέτῳ μέγαν ἄκμονα, κόπτε δὲ δεσμοὺς (8-273,4)
胸深く悪を企んで鍛冶場へと向かい
金床台に大きな金床を敷き、鎖の網を鍛えにかかった
χαλκεῶνα [khalkeôna] 鍛冶場、 κακὰ [kaka] 悪、ἀκμοθέτῳ [akmothetô] 金床台、ἄκμονα [akmona] 金床、κόπτε [kopte] 鍛えにかかった・・・これらの語に含まれる [k] 音が利いている。嫉妬のあまり怒りにまかせて打ち付けるのだろう、ぶつかり合う金属の音が聞こえてくるようだ。
沖縄弁で印象的なものに小(グヮー)がある。語尾につける愛称の指小辞だ。
「石グヮー」は小石、「イユグヮー」は小魚、「ネーネーグヮー」は年下の姉さん、といった具合だ。また、「サキグヮ-」は愛飲の酒、「太郎グヮ-」は太郎ちゃんなど、実に応用範囲が広い。更に「よいアンベーグヮ-」(ちょっとよい案配にのニュアンスか)まである。
以前、沖縄滞在中こんなことがあった。那覇の碁会所で一局打ち、局後の検討で席亭の言った言葉だ。「ここでハネグヮ-を利かしてよ、云々」。「ハネ」は特に沖縄弁ではなく普通の囲碁用語で「相手の石の行く手を制限するように自分の石から斜めに打つ手」とされている(「利かして」の同様囲碁用語で「相手が無視できないような手を打って」の意)。これを聞いていて、「ははあ、ハネにもグヮ-が付くのか、しかしいかにも軽く利かす感じが出ているな」と感心したことを覚えている。