2月19日


自分の帰還を妨げているのはどの神か。メネラーオスは、それを知るには「海の老人」と呼ばれる神を捕らえ彼から聞き出すのがよい、と女神から助言される。ただし、捕らえるのは昼寝時がいいのだが、その時彼の傍らにはアザラシが沢山臥していて

πικρὸν ἀποπνείουσαι ἁλὸς πολυβενθέος ὀδμήν (4-406)
  深海の鼻を衝く悪臭を吐き出している


と教えられる。これには思わず笑わされる。「鼻を衝く」と訳したπικρὸνは「鋭い、苦い、容赦ない」という意の形容詞で、これは現代のアザラシの生態に詳しい人の証言のとおりだ。

勿論メネラーオスは、帰還のためには背に腹は代えられないと、忠告に従ってアザラシたちと一緒に伏して寝込みを襲おうと待ち構える。

しかし案の定、


  ἔνθα κεν αἰνότατος λόχος ἔπλετο: τεῖρε γὰρ αἰνῶς
  φωκάων
ἁλιοτρεφέων ὀλοώτατος ὀδμή (441,2)

それはとんでもない待ち伏せとなるところであった、というのもほとほと

海育ちのアザラシの世にも凄まじい悪臭に参ってしまったので

「αἰνότατοςとんでもない」と「αἰνῶςほとほと」、いずれも「αἰνός恐るべき」の変化形だ。同類の語を繰り返して滑稽の度を高めている。

 昨日の航海に関わるくだりもそうだが、ここら辺、『オデュッセイアー』は海の民の詩編だとの認識を新たにさせられるところだ。



 「平家物語」の朗読は今までに何種類か聴いたことがある。平曲弾き語りも含めて。だが、成る程いいなと思うものはなかなかない。抑揚やテンポが自分のイメージに合わなかったり、癖が強過ぎると感じたり。これは好みの問題もあるのだろう。私にはこれまでの中で水原一の朗読が一番なじめた。ただかなり昔の記憶なので、何とか今の耳で確かめてみたいと思う。
 ホメーロスの朗読についても同様のことがある。これについては改めて取り上げたい。