1月16日
さて、第2歌に入る。
テーレマコスはアテーネーに言われたことに従い、集会を開く。集会場に向かうテーレマコスは
οὐκ οἶος , ἅμα τῷ γε δύω κύνες ἀργοὶ ἕποντο . (2-11)
一人ではなく、彼には二匹の素早い犬が随っていた
犬を表すκύνες [kynes] は吠える声の擬音に違いない。そして、「素早い」と訳したἀργοὶ 、この語は元々は「白い」とか「輝く」という意味だが、それが「速さ」を表すのもよく分かる。色と速度が通じている。これも共感覚といわれるものの一つだろう。
1月17日
集会で皆の前に立ちテーレマコスが話を始める。
στῆ
δὲ
μέσῃ
ἀγορῇ
: σκῆπτρον
δέ
οἱ
ἔμβαλε
χειρὶ
κῆρυξ
Πεισήνωρ
πεπνυμένα
μήδεα
εἰδώς
. (2-37,8)
集会の真ん中に立つと、彼の手に笏杖を渡す
思慮分別を心得た伝令のペイセーノールが
伝令κῆρυξ はホメーロスの両詩編で活躍をする。伝令の役割自体、マイクも電話もなかった時代、主要な通信手段としてその重要性は今日の比ではない。しかし伝令業だけではない、『オデュッセイアー』第1歌でも、酒を注いでいたし、伶人に琴を手渡してもいた。さらにここでは発言者の印である笏杖を渡す役割りを演じている。
とここまで記していて、昨日相撲中継で呼び出しの仕事を紹介していたことを思い出した。相撲の呼び出しも言われてみると実に多彩な業を担っている。
土俵上での力士呼び出し(呼び上げ)はもちろん、土俵を掃き清め、力水をつけ、タオルを渡し、時間いっぱいを告げる。拍子柝を打ち、懸賞幕をもって周る。場所前後には土俵を造り触れ太鼓やはね太鼓も叩くという。κῆρυξ と呼び出し、うーん似ている。