1月12日
冬将軍到来。今朝は零度近かったのではなかろうか。この「冬将軍」、シベリア寒気団の擬人化で、英語にgeneral frost、フランス語にgénéral hiver があり、冬将軍はその翻訳だ。何世紀にもわたる対露戦史でスエーデンやフランス、ドイツが寒さに手こずった歴史から来た表現らしい。
もっともNHK天気予報の冬将軍マスコットは可愛すぎてあまり厳寒のイメージがない。
オデュッセウスの妻ペーネロペイア登場。
τοῦ δ᾽ ὑπερωιόθεν φρεσὶ σύνθετο θέσπιν ἀοιδὴν
κούρη Ἰκαρίοιο, περίφρων Πηνελόπεια (1-328,9)
階上からその神のごとき歌を
思慮深いイーカリオスの娘ペーネロペイアは心に聞いた
「神のごとき歌」というのは階下の広間で伶人が吟じるトロイア戦役からの帰還を歌う詩だ。ペーネロペイア登場のきっかけがトロイア遠征の詩であるというのは面白い。詩編の中の詩が詩編自体とつながっている。
階段を下りてきて階下の広間の戸口に立つ。通常彼女は二階に居るのだ。館の構造も注意して読んでいこうと思う。
1月13日
昨日の日比谷公園の噴水、鶴の像を見る。翼から氷柱が何十本も下がっている。
テーレマコスは、アテーネーの励ましを受けて、求婚者たちに退去を申し渡すことを予告する。そこでの求婚者たちの反応が以下の詩行だ。
ὣς ἔφαθ᾽, οἱ δ᾽ ἄρα πάντες ὀδὰξ ἐν χείλεσι φύντες
Τηλέμαχον θαύμαζον, ὃ θαρσαλέως ἀγόρευεν. (1-381,2)
(テーレマコスが)このように言うと、彼らは皆唇を噛んで
テーレマコスを呆れて見た、彼があまりにも大胆に発言したから
「唇を噛んで」と訳した箇所はὀδὰξ ἐν χείλεσι φύντες、直訳しても「歯を(ὀδὰξ)唇に(ἐν χείλεσι)押しつけて(φύντες)」であり同じ仕草であるにちがいない。そして日本語の「唇を噛む」もこの場面のὀδὰξ ἐν χείλεσι φύντεςも表現するところの感情は共通に「無念さ」や「憤り」だ。もっとも日本語の「唇を噛む」は「無念さ」のニュアンスがより濃く、一方ὀδὰξ ἐν χείλεσι φύντεςは「憤り」が強いかもしれない。ホメーロス詩の登場人物と現代日本の我々との仕草や感情の共通性とずれ、これも興味深い。