北風が冷たくなってきた三宮の街角に彼はいた。
聞けば同郷(北海道帯広市)で、ローカルな地名がいきなり飛び交い盛り上がる。
私は公務員(警察官)だったのですよ、とまず彼は切り込む。
フォルクスワーゲンのキャンピングカーに、現金2千万積んだままにして
淡路島の駐車場に停めておいたんですよ、そうしたら盗まれましてねえ・・
彼の占術は、この話から入らなければならない。なぜならば、まず胸襟を開き
お互いの立場を近くして、強い交流を流すことから、術は伝わるからだ。
私は山形の宮司なんです。宮司にして警察官、そして占術家にして流浪の民。
私は、その後フォルクスワーゲンはどうなったのか聞かなかった、また
占術家として、その災難をどう受け止めるのか、も、聞かなかった。
なぜ「あなたは孤独なのか?」それも聞かなかった。
聞くまでもあるまい、彼は流浪の民なのだ、ジプシーである以上、すべての執着から
解放されている、だから笑い話に変えることができる。
盗んでいったのは神様に決まっている、しかし罰ではない。
私は小説を書いています、どうなりますかねえ?と尋ねた。
彼は易を立て始めた、そして気を出した。
「あと3~4年辛抱しなさい。しかしね、あるとき、急に売れるからね、気をつけなさい」
彼の名は「歳 占麗」(さい せんれい)
