rh534のブログ -33ページ目

rh534のブログ

2024,1,3初の長編小説「星の光源~アン・マンズフィールド・サリヴァン異聞」土井章寛著 発売されました。

好きな花は?

▼本日限定!ブログスタンプ

あなたもスタンプをGETしよう

 
デイサービスで仕事をしていた頃。
ご夫婦で利用されるお客様がいた。
奥さんは佐久間良子のような美人だったが、旦那は猿のような小男。
のぼるさんは、デイに来ると5分おきに「しょんべん!」と言って
お帰りになるまでに36回はトイレに行ったが、認知症ではなかった。
奥さんはそのたびに「我慢しなさい、ね、我慢できるでしょう!」と
叱ったり、励ましたり、怒ったりしていた。
 
ある夏、お迎えに行くと、庭の片隅にスズランが固まって咲いていた。
そこだけ白く光り、甘い香りが溜まっていた。
 
それから奥さんの都合で、のぼるさんは、ショートステイに3日行った。
ご自宅で私たちが、ケアプランについてはなしをしているとき
ショートステイから緊急の「これから帰ります」と連絡があり
まもなく、職員に抱きかかえられるようにして、のぼるさんは、帰宅したが
歩けなくなっていた。奥さんはその姿を見て泣いた。
ほどなくして、彼は亡くなった。
 
ショートステイで、事故はなかった。ケガもなかった。
「特に変わった様子はありませんでした」そう職員は言って帰って行った。
彼を死に追いやったものは、いまだに不明だが
奥さんから切り離されて、3日過ごした夜は、どれほどの静けさだったか。
灰色の壁を、じっと見つめなければならなかった、彼の孤独を誰が知ろう。
 
怒られても、けなされても、文句ばかり言われても
奥さんの言葉は、彼を「助けていた」
 
北海道のスズランは6月に咲くが、花の命はとても短い。