ちょっとした幸せを感じる瞬間は?
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その朝も、彼は起床介助を受けると「今何時?今朝?夜?」と質問を連発したが
私の返事には関心が無いらしく「ああああああああ!」と天井に向かって叫び
「もう生きているのが辛い」と言った。
私は場を変えるのがいいと思い、食堂へお連れした。
「だれもいないよ・・早いの?早いんじゃないの?」
「いえ、早くはありません」
「どうして?どうしてそんなことが言えるの?」
「もうすぐ、みなさん集まる時間ですから」
彼には家族がいない。
帰る家もない。
優秀な公務員、高学歴であったと言うのに。
「あんたは、わしの話を聞いてくれる・・」
そう彼は言った。彼は狂人ではない。
「女の子たちは、つんけんつんけんしてなあ、あれしれ、これしれ、と
指図ばかりする。誰もわしの話など聞こうとせん」
私は彼の、澄んだ瞳が何であるのか知っていた。
その時食堂内に、朝食を知らせる音楽が流れた。
彼は、その曲を聞くと、ハミングし始めた。
とても嬉しそうに、歌い始めた。
そして、私に尋ねた「この歌の名は?」
「虹を越えて。オーバーザレインボーですよ」
「オズの魔法使いか?」
「そうです」
彼は陽が昇って来る、東の窓を見つめた。
