1新・小説 誰でも最初はど素人どっせ! 松本万次郎 | 京都 coffee bar Pine Book

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日々楽しく生きるにはコツがあります。
まずいちいち反応しない事です。
そしてオセロの4つ角を取る事です。
4つ角とは?
1 健康
2 人間関係
3 趣味
4 仕事
コレが楽しく生きるコツです


松本万次郎  14歳


中学2年の夏休みが始まろうとしていた。


茹だる京の夏・・・


万次郎は退屈であった。


「暑っつ!しかし、暑いなー」

万次郎は部屋から金色に輝く庭を見つめ溜息をついていた・・・ふぅー


京都のお京阪。

京阪電鉄。

京都三条発、大阪淀屋橋着の電車。

京阪五条駅から西へ五条大橋を渡ると南側に五条楽園と書いてある大きなアーチがある。

このあたりには平安時代末期頃より存在し平景清も訪れたと伝わる五条楽園がある。



もともとは五条新地、六条新地、七条新地という隣接する複数の遊郭であったが、これらが大正時代に合併し、長らく七条新地の名で親しまれた。



かつてより芸妓と娼妓が混在する花街であり、戦後はいわゆる赤戦となり、営業を続けていた。

とそこにある喫茶店ロイヤル。


この喫茶ロイヤルでの万次郎の誰でも最初はど素人どっせ!の始まり始まり・・・




古びた黄色い自転車。

万次郎は、イージライダーチョッパーハンドルの愛車に跨り、行くあてもなく西へ西へとペダルを漕ぐことなくフラフラと・・・


なに?何か書いてある?!


クルリンパっ!


チャリンコを何やら書いて貼ってある喫茶店の入り口に向けてゆっくりと走らせたのだ。


アルバイト募集!



至急アルバイト店員募集。

期間  ずっと

時間  朝8時からお客様帰られるまで。

時給  1時間  240円


アルバイト?

万次郎はアルバイトってなんや?と思った。


カランカラン♪


暗っ!暗いな。真っ暗やないかい!


夏の日差しで目潰しされたように、店内は暗かった。


万次郎は、喉も乾き立ちくらみしそうになった。

そこは踊り場が小さく直ぐに階段が下の店内に続いている。


あの〜?あのぉ?すいません~!


はーい!


下の方から聞こてきた若い男性の声が。

「は〜い」?


階段途中の壁から突如顔を出し、万次郎を見つめる。


驚く万次郎!


壁から「何なさいますかぁ〜?」「冷珈?」


「あの〜入口の見たんですけど〜」


あ〜アルバイト?の?


はい!元気に答える中学2年の万次郎!


ちょっと下まで降りて来てくれますか?


はい!


万次郎は中階段を降りて階段下のフロア店内の鴨川が見える席に座った。




「そう!ボク?何年生?」


「中学2年!」


ほな、大丈夫やな・・・

店員らしき青年は言った。


「何が大丈夫なん?」


「あのな、ボンな小さいから小学生かな?と思ったんや、堪忍堪忍」


「アルバイトしたいのんか?」


「アルバイトって何?」


「働くことや、アルバイトは。アルバイト初めてか?


「うん、初めて」


「何か飲むか?喉乾いてへんか?」


万次郎はさっきからどっと汗が顔面から吹き出していたのだ。


「うん!ボク喉乾いたわ!」


「ほな、兄ちゃんがとっておきのチベタイレモネード作ったげるわな!」


「レモネード?」「レモネードってなに?」


「レモネードはな、レモンとソーダ水とお砂糖が入った飲み物やでぇ!美味しいで〜ちょっと待っててや」


万次郎はGパンをハサミで切った半ズボンのポケットをまさぐった。


やっぱり?ない!財布ない!忘れてる。


万次郎は何か買う目的で愛車に跨る以外は去年の夏に買った、カエルのビニールの小銭入れはポケットにいれないことにしていたのだ。


「あの〜あの〜」


「・・・」


万次郎は立ち上がりお兄さんが入って行った壁がくり抜いてある小さなトビラがついている小部屋に向かった


「あの〜お兄さん?」


「なんや?」


何やら忙しそうに冷蔵庫を開けているお兄さんに向かって言った。


「あの、お兄さん?ボクな財布忘れてきたし財布持ってくるわ!」


「財布?財布てなんで?いる?」


「せやかて、そのレモなんちゃらな、お金いるし」


「なんや、ボン!しっかりしてるな。タダや、タダ!お兄ちゃんの奢りやがな!子供のくせにしっかりしてるな!」


「タダなん?かまへんのん!」


「かまへんかまへん!タダやタダ。タダの美味しいレモネード飲んでや!」


「・・・タダなんか。ありがとう」


万次郎は初めてお兄さんが作ってくれたレモネードを口にした。



おいひい!ちべとーて、甘くて酸っぱくて。


「お兄さん?むちゃくちゃ美味しいで、レモ」


「レモネード!」


「美味しいわ!レモネード!」


万次郎は、ストローから音がするまで時間がかからなかった。


「ボク?もう1杯飲むか?」


「うん!飲みたいわ、ボク。2杯目もタダかぁ?」


「タダやタダ、なんぼでも飲んでええでぇ」


「ありがと〜〜〜」


万次郎ら2杯目もあっという間に飲み終えた。


「ボク、名前なんて言うのや?」


「万次郎!」


「ほな、万次郎くん!お兄ちゃんにレモネード作ってくれるか?」


万次郎はレモネードも初めて聞いたし、飲んだのも初めて。作れるわけがない!


「どうやって作るのん?」


お兄さんは小さな冷蔵庫にぶら下がりながら張り付いていた下敷きの中に何やら小さな文字でびっしりと書かれているものを万次郎に手渡した。


「万次郎くん!そこにたくさんなんか書いてあるやろ?」



万次郎はお兄さんから受け取った。


なぬっ?レシピ?レシピ。


レシピと書いてある下敷きを渡された万次郎がいた。