67 小説 裁判官の子として生まれたキミ | 京都 coffee bar Pine Book

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日々楽しく生きるにはコツがあります。
まずいちいち反応しない事です。
そしてオセロの4つ角を取る事です。
4つ角とは?
1 健康
2 人間関係
3 趣味
4 仕事
コレが楽しく生きるコツです

被告  山下一郎は、無罪っ!

大阪高等裁判所の裁判官が言い放った。



どよめく法廷。

傍聴人席から飛び出して行く者は、多分記者達であろう。

高裁正面玄関前では、無罪!の垂れ幕が誰が用意したのか、掲げる支援者達の笑顔が溢れ落ちている。


バンザイの声が沸き起こった。


山下一郎は、法廷で泣き崩れた。

勿論、玉子も弟山下健二も立ち上がれない。

康三は相変わらずのポーカーフェイスで弁護団席の前に座る検察官を見据えている。 


筆頭副主任の戸田勝弁護士は、小さく拳を上げ、傍聴人がすわる席に向かって小さなアクションで応えた。


長い二審であった。

現場に何度出向き調査、実験をしたか。


裁判長の「被告人は、無罪っ!」


の一言が、こんなにも重く、暖かく一瞬で人を歓喜させるのかと、次生は痺れた。

幸せに酔いしれたのだ。


カッチョイイっ!

戸田先生!おめでとうございます。


良かったーーーー。ホンマに良かったっ。


溢れ出る涙を拭くハンカチを次生は持ってこなかった。