ヒナの誕生話その1のつづき。
自宅に復帰して暫くしたころ、ある事件が発覚しました。
狙っていた助産院が一杯で断られたのです。
カミさんは以前から助産院で産むことを希望していました。普通の病院では自然なお産が出来ないためです。
最初に聞いたとき私はびっくりしましたが、お産や助産院に関する本や話を聞くうちに、助産院での出産が良いと思うようになりました。
そして、東京では有名な某助産院を狙っていたのですが、とんちゃんが産まれる予定の8月は予定が一杯というのです。
それを聞いたカミさんの落胆振りといったら・・・。
しかし、今更普通の病院にするわけにもいかず、色々探した結果、国立にある助産院にお世話になる事になりました。
助産院に定期的に検診を受けに行くのですが、毎回エコーで見せてくれるし、アットホームなので色々質問も出来るし、やっぱり助産院っていいなぁーと思いました。
よし!ここで産むぞ!(自分じゃないけど)
そんなこんなで月日がたち、夏前にはカミさんのお腹は巨大になっていました。
入院の件があったので、極力大事にしていたせいか、ちょっと大きくなりすぎたみたい。プラス10数キロだったかな?
ちょっと運動しなきゃいけないですね。そうそう、とんちゃんも大きくなって、エコーで見ても体の一部しか見えません。
そして、アレが見えないので女の子かなぁ・・・?
そろそろ名前を考えなくちゃ。
7月。突然でした。
広島のカミさんのおじいちゃんが亡くなったのです。
もし、広島で何かあったら・・・。不安が頭をよぎりましたが、カミさんが小さい頃に面倒を見てもらったおじいちゃんなので、行きました。
広島では皆、カミさんのお腹にびっくり。それぐらいでかかったのです。
カミさんは、多少気分が悪くなることもありましたが、幸い大きな変化もなく無事に帰ることが出来ました。
ちなみに、行きも帰りも新幹線のグリーン席にしました。こんなことはもうないでしょう。
そして予定日の8月。
そろそろとんちゃんも落ち着くかなぁ~と思いきや、バリバリ動く毎日。
気を揉んでいるうちに、予定日を過ぎてしまいました。
んー、これ以上大きくなると困るなぁ。ママは小さいんだから、大きくなりすぎると出てこれなくなっちゃうよ!とんちゃん!
しかし全く気配がなく、予定日を2週間も過ぎようとしていました。。。
1998年8月26日。予定日をだいぶ過ぎているので、心配になった私たちは、助産院が提携している産婦人科へ行きました。
そこで先生に診てもらったところ、「陣痛が来るようにマッサージしましたから」と。
陣痛促進剤を使ったわけではない様子。そんなマッサージがあるのかなぁ?と半信半疑ながら帰宅したその日の深夜。
もしかしたら、陣痛来たかも。。。カミさんが言いました。
マッサージ以降、痛みは続いていたようなのですが、ちょっと様子が変わってきたらしい。
すぐに助産院へ電話しました。すると、朝になったら来て下さいとの事。
いよいよ始まった!
1998年8月27日。その日は雨。
助産院に着くと検診。まだ子宮口はあまり開いていない様子。しばらく別室で待つことになりました。
待つ、といってもカミさんは痛いので、ひたすらさすること丸一日。結局その日は夜になっても進展がありませんでした。
まだ時間がかかりそう、ということで私だけ着替えなどを取りに家に帰りました。
結構のんびり構えていたので、ちょっとゆっくりしていたのですが、助産院に戻ったらびっくり!
破水していたのです!
子宮口はそんなに開いていないのですが、先に破水したということで動揺を隠せない私。
助産婦さんは大丈夫、と言ってくれたのでちょっと安心しましたが、カミさんはだいぶ痛くなっている様子。緊張します。
そして、1998年8月28日の朝。その日は大雨でした。北関東は大洪水になっているというニュースが聞こえてきましたが、それどころではありません。
お産部屋へ移動したカミさんは、ついに出産の体制に入りました。
私はカミさんの手を握り、一緒にお産の呼吸をします。ひーひーふー、ってやつですね。助産婦さんは3人に増えました。
少しずつ子宮口は開いていっているようです。しかし、八分目から先がなかなか開きません。
何時間続けたでしょうか。カミさんの体力が落ちてきているのが分かります。
でも、とんちゃんは出てきません。
カミさんは、このままで大丈夫なのか!?言いようのない不安が頭をよぎります。
お昼過ぎ、ついに助産院での出産を諦めました。
カミさんに過呼吸の症状が出たためです。
私の運転する車に、カミさんと助産婦さんが乗り込み提携先の病院へ直行しました。
二晩徹夜した上にこんな緊急事態という極限状態です。病院への道のりが異常に長く感じました。
病院に到着すると、診察の後、陣痛促進剤を打たれました。
嫌だった陣痛促進剤ですが・・・。
そして、とりあえず下から産んでみましょう、ということになり、カミさんはすぐに分娩室へ。
私も一緒に入ろうとすると、静止されてしまいました。えぇーっ!ここまできて立会いできないの!!
でも、緊急事態です。仕方ありません。
しばらくすると、部屋の中からは、とんちゃんの心音とカミさんの叫び声が。それも延々と。。。
私は、分娩室のドアの前に張り付いたまま動けませんでした。
神様、仏様、二人を助けてください!!
何度祈ったことでしょう。。。
何時間待ったでしょう。いや、実際には、たぶん30分ぐらいだったのではないかと思いますが。
おぎゃ~・・・という泣き声が聞こえました。
産まれた!?カミさんは無事なのか!?
正直、この時はカミさんの方が心配で、嬉しいとかほっとしたという気分ではありませんでした。ごめん>ヒナ
暫くすると、看護婦さんが赤ちゃんを抱っこして出てきました。
「産まれましたよ~」
こっ、これがとんちゃん・・・?
頭が異様に長くて、お猿さんみたいな赤ん坊でした。
しかし、初対面もほんの数秒で、看護婦さんはそのままどこかへ。
そして、ようやく分娩室が開き、カミさんと再会することが出来ました。
カミさんは放心状態でした。
しかし、とりあえず無事な様子。本当にほっとしました。「よく頑張ったね・・・」それしか言えませんでした。
こうして、とんちゃんは午後3時過ぎに3520gという大きさで生まれました。
とても元気な女の子です。なかなか出てこないため、頭をカンシで引っ張ったそうです。
ようやく幸せをかみ締められる・・・と思いきや、苦難はこの後も続きました。
つづく