宏実は死んだ。
僕には、昏い僕には、
とうていどうにもならなかった。
駅のホームから見た、
思ったのは、
何もわかっていなかった、と。
僕は吐いて、
僕は泣いて、
雨の十一月、西へと歩いた。
何もわかっていなかった、と悔いながら、
さむい都道を歩きながら、
僕は自分の感情に酔っていたに過ぎない。
文字通り破壊された宏実を見て、
感じていたそれは、
世を儚んで慰めを求めた彼女を、
言葉を用いて慰み者にした折々に、
感じることのあった僕の僕への感情。
宏実のことなど思っていなかった。
その証拠に僕はふとこんなことに気づく、
濡れたら制服に忍ばせた煙草が湿気る、と。
コンビニの軒先で火を点ける。
僕は思っていた、
あの部屋に置いている僕のCDの行く末を、
それに、
自分も事情聴取されるのだろうか、
授業中に呼び出されたらどうしよう、
と。
そうなったら死ねばいいんだ、
と考えた。
二十三年経つ。
僕の基幹をなすものは、
このように腐りきったものであって、
幸か不幸か自分の臭いを悟った僕は、
自分を否定し、更新し、造り、棄てる。
少しでもマシにと望むのだけど、
どうにも果てがないらしい。
だから僕は考える、
僕が世界を少しずらせば、
生きていける人がいるかもしれない、と。
今でも宏実には謝らない。
許してもらうわけにはいかないから。
死ぬわけにもいかない、
逃げるわけにはいかないから。
ただ、
宏実はもう何も見ない。
何も言わない。