徐々に五感が機能してきた。
どうやら、意識が戻ったようだ。
しかしなかなか目を開けられなかった。
あの悪夢のような光景に見舞われたあとだ。目前には何があるか考えるだけで怖くなる。
周りからは物音一つ聞こえない。
おそらく教室の中ではないだろう。それから瞼を閉じているのに関わらず、その隙間から眩い光が入ってくる。それが少し眼孔に刺激を与える。
ここはどこなんだ...
どこにいるのかが予想がつかない。頭が全く回らなかった。
とりあえず今の状況を掴むために、いやいや行動を起こそうと目を開けようとしたら...
「お主、なにをやっておるのじゃ。」
少女がこちらを見下ろしていた。
一言でいえば天使だ。褐色の双眸をしており、銀髪の長髪をなびかせていた。この世のものとは思えない美しい姿だ。その美しい容姿とは裏腹にどこからか幼さも感じられる。
年齢が全く予想できなかった。
俺は無意識にじっと彼女のことを見つめていた。
「何か顔にものでもついておるのか?。」
勘違いされたみたいだ。ずっと見つめられたらそう思いかねないだろう。
ところでここはどこなのだろうか。
俺は周りを見渡してみたが、白一色に染まっていて、どこからか光が漏れている。非常に幻想的な光景だ。
一言で言えば、桃源郷(ユートピア)。そのような感じがした。
そして、この空間にいるのは地べたに座っている...、いやそもそも地べたと言う表現が間違っている。まぁそこはさておき、ここには俺と目の前にいる天使のような彼女しかいないわけだ。
「ここが何処か気になるのか?」
俺の視線の動きからそう予測したようだ。しかし、こんな人の前だとこうも体全体が言うことを聞かないものなんだな...
俺はどう受け答えるか迷ったが、とりあえず簡単なコミュニケーションのつもりで頷いて見せた。
「やはりそうなのか。その前にお主、立つのじゃ。上から話すのもなんだしな」
「えっ?あ、うん...。」
そう言えばまだ座っていた。
確かにこう話すのもなんだし、彼女の言葉通り立った。なにも変化はなかった。
教室で起きたあの得体の知れない重力がまた襲ってくることはなかったようだ。
「すぅ....はぁ.....。」
心身を整えるため、呼吸する。
もう、彼女の前でも平然と振る舞えるようになるだろう。
さっきは唐突に目の前にあのようなものが現れたから対応できなかっただけのようだ。
「治ったみたいじゃな。」
「あぁぁ、そうみたいだ。」
いつも通りだ。
そういえば、彼女は何者なのだろうか?もしかして、あの重力の要因はこいつが...
「なにを怖気づいておる。我はお主の味方じゃ。」
「そうなの...か...?。」
「そうじゃ。」
とりあえず信用しよう。
「では、心して聞いておくれ。今からお主の今の状況について説明する。勿論、我についてもじゃ。」
「あぁぁ、お願いする。」
ようやく今の自分の不可解の状況の理由がわかるようだ。しかしどこからか悪寒がしてくる。これを聞いてしまうと、もう後に弾けない、いやそれ以上の絶望が自分の身体にのしかかるような気がした。
そして、彼女が発した言葉は...
「もう薄々気づいているかもれんが...
お主はもう死んでおる。」
そんな、心が抉りとられるような一言だった。