どれもこれも信じられなかった。信じる以前にも理解することも容易ではないような話もあった。
また得体の知れないものは俺を襲う。無気力になる。
途端に俺は過去を思い返し、呼吸をしてみた。 いつも通りの状態だ。
とりあえず、神様が言ったことを整理してみよう。
まず、俺は普通の人と少し死ぬ時に変わったことが起きたらしい。
いや、普通起こることが起こらなかったと言う方がいいか。
この世界の生き物は死んだ時
すなわち心臓と脳の機能が停止した時に、体内から「魂」が抜け出てくる。
その「魂」は天へと召されるのだそうだ。その後どうなるかは神様も言っていなかった。
言えない事情、それか単に言う必要がないのかどちらかだろう。
そしてこの一通りの現象の中で、俺は例外にも「魂」が天へと召されなかったそうだ。
それで神様はその異変を感じとって真っ先に俺のところへ来たそうだ。倒れていたので、自分で作った空間に放り込んだらしい。
そして、この「魂」は今の俺の身体を形成しているという。
つまり、常人なら今の俺みたいにはならず、何処かこの世とは違う場所にいったのだろう。あくまで推測だが...。
なら、俺は幸運だと言うことなのか...?
いやこれは悪運だ。
「魂」だけの存在がこの世界にいるのは可笑しいのだ。
ならこの世界はその異端なものを消すのは当然だ。
パソコンが自動的にウイルスに侵食されるのを防ぐため、排除しているのと同じ
俺はこの世界のウイルスなのだ。
あってはならない存在なのだ。
これを聞いた時はまた最初に告げられた死のごとく、心に刺さったが、二度目なら耐性もしっかりしている。なんとか我が身で耐えた。
では、俺はこの世界から排除されるとどうなるのか...?それは...
「無」の存在になる。
魂はその場で排除され、天へ召されることもなくこの世界によって消失される。
この世界はこういうシステムなのだ。
まぁ魂がその場に止まったのが俺で初めてらしいので、そのシステムとやらも随分暇してただろう。
なら初めて現れた俺(ウイルス)にはそりゃ、全力を振り絞って排除しようとするだろう。
そう、教室で起こったあの悪夢みたいに...。
あれはこの世界の仕業だ。
あとあれが何回も起こる。そう考えただけで身震いがした。
神様は、あとあれが何回か起きたら直に俺はそれに耐えきれずこの世界から消失するそうだ。
この場にいる時間はもうあと少ししかない。
では、俺はなにをすればいいのだろうか?
誰も俺は見ることができない。
「魂」だけのものは「魂」を宿った個体には触れることさえだきない。
「魂」のないものだけ触れられる。
記憶も曖昧だ。これは死んだ時に記憶が飛ぶような刺激が脳にくらったと神様は考えているようだ。
過去起きた出来事はなに一つ覚えていない、仲の良い友達が何人か覚えていて、自分の特徴などそのくらいだ。日課というわけもわからないものも何故か覚えていた...。
名前もそうだが、何か大切なものを忘れているような気がする...。
これが心に引っかかっていた。
俺はこの大切なものを思い出したら、この短い間にやるべきことが見つけられるような気がした。
しかし、それを思い出すためにどうすればいいかわからない。
迷走している...。
ゴールのない迷路の中を歩いているような気がする。そして、結末は用意されていて、俺はその台本通りにこの世界から消失するのだ。
「無」の存在となる。
もう慣れてしまった。
こんな恐ろしいことに慣れてしまった、自分が少し恐ろしく感じた。
そういえば、俺はもう「魂」でしかないのだった...。