暗澹なる深淵迷宮、通称 ダンジョン。
それがこの薄暗い洞窟内の呼び方だ。迷宮なんていう人もいるが、大多数の人はダンジョンと言うだろう。
理由は然り、かっこいいからだ。
だから俺も「ダンジョン」と言う。俺は常にかっこいいを欲している。それは言動や行動、勿論外見にもかっこいいを求めている。つまり、欲求がある。なんとも不思議な欲求なのだろうか。
まぁそれが表面的に俺の雰囲気から出ていて、女子も誰一人俺にときめかない。ましてや、友人の一人も得られないまま、もう17歳にもなってしまった。情けない。
そして、ダンジョンに潜る時も常に、いや今までずっと一人だ。
かっこ良くなってモテるためにダンジョンを潜り始めたのにも関わらず、この始末...。理不尽じゃないか。まぁ全ては自業自得。怒ったって意味がない。
「おっと...暗くなって来たな...。」
そうこう自分の不甲斐さを自答している内にだいぶダンジョンの奥まで着いた。
暗闇から微かに獣の濁声が耳に入る。不協和音となってダンジョン内に反響している。何匹も潜んでいるようだ。
俺は両腰の鞘に納めている業物のを双剣を抜刀した。その金属がこすれ合った甲高い音がダンジョン内に響く。すると、一瞬として声が止んだ。
「...。」
一触即発の空気だ。今にでも何もない所からかかってきそうな予感がする。悪寒がしてきた。
ダンジョンの上の岩に付いていた、雨粒が地にしたたった音が合図となり、獣が一斉に四方八方からかかってきた。狼型の獣で、対して速度は早くない。
「...っ!」
まず一匹目を躱し、右手の剣で首を断ち切る。鮮血が溢れ出す。
次は同時に二匹飛びかかってくる。流石に迎撃できずに、地に転がり、体勢を立て直す。すると、後方から一際サイズが大きい狼が唸り声を上げてこちらを威嚇している。こいつが親玉のようだ。
「随分威勢がいいじゃねえか。」
一応挑発してやった。そして、どうこの場面を打破するか考える。
生物は統率者がいないと、しっちゃかめっちゃかになり戦闘できないはず。それを信じ、全神経を親玉の狼だけに集中させ、迫撃戦に持ち込む。
しかし、親玉の後方から、俺を待っていたように二匹の狼がまた立ちはだかる。これで前後狼によって塞がれてしまった。調子乗って奥まで来たのが悪かった。
こういう時に一人は少々手こずる。そう、少しだけ。
俺は前方に立ちはだかった二匹の狼に目もくれず、跳躍。
二匹の頭上さらに上方へと飛び、一気に親玉の前へ着地。
そして渾身の一撃を、双剣を使い顔面に突き刺す。
「ぁあっ!」
見事に両断。口の歯は下方しか残っておらず、それまで上は剣によって切断。それと同時に大量の血と脳漿を浴びる。
「くそ、また汚れちまった。」
親玉の顔面は生物の物とは思えないほどと化し、切断面から血が滝のように流れ落ちる。それに伴って、骨や肉片、臓器らしき物も目に映る。
これには慣れたものだ。
ダンジョン内の生物は妙に血の量が多く、それがこの生物とは思えない力量を生み出しているという。
しかしそれも、俺の前でも機能なし。
「はぁ、惨い。」
親玉が死んだことで、他の狼は何処かに走り去ってしまった。予想通りだ。これを情報屋に売ればまぁ少しくらい金が入るだろう。
そんなことを考え、今日の俺こと『グレン・ヘルシャヴィン』迷宮探索は終わった。