ダンジョンは、時によって出現する場所が違う。そのためまずダンジョンが現れると思う所へ向かうのだ。
そして何時もの機械を右足についている、袋から取り出しダンジョンの居場所を捜索する。この機械は地への引力を探知することが出来、ダンジョンはそのような所にある。
「深淵」と付くほど奥が深いので、ダンジョンの入り口は引っ張られるような力が働いている。
機械の指す向きに従って、草木を縫って歩いて行くと地面にある大きな漆黒の洞穴を見つけた。上から覗き込むが何も見えない。
ここからが異世界への通路だ。
俺は何時ものようにその空洞の中に飛び込む。
すると、空間が歪み、それから体も歪み、ふと思ったら、地についていた。
「また異世界とのご対面だ。」
今になっては慣れたものだが、始めて潜った時は意識が吹っ飛びそうになったことだ。なんせ体が上下でずれていたからな。
今回のダンジョンは開始地点からやけに壁がドス黒い。大物が期待出来そうだ。
そして、俺はそのまま真っ直ぐ歩き進んだ。
途中で何匹か獣と、分かれ道なども出て来たが、特に迷わずいけた。
奥に行くの連れて徐々に壁の色が濃くなって行き、道にも凹凸が増えて来た。それから、どこからか嫌な予感もしてくるようになった。
今までにないぐらい強い匂いだ。
胸がウズウズする。
この先にきっと大物がいるだろう。
気持ちを高揚させてさらに深淵へと向かう。
そして道が一つの部屋に繋がっていた。
「なんだ?」
そこは宴会が開けるほどの広さがあった部屋だ。周り全てが先ほどよりも一層濃くなった漆黒の岩石によって弾きし詰められ、一つの大広間となっていた。
そして、その中心に。
一人の黒い衣を見にまとった少女が佇んでいた。
妖気...。鬼気...。殺気...。
そんな気力がその少女から感じられた。
ずっと下を向いている。
手には極上の鎌。
俺の脳が直ぐここから逃げろと信号を送っている。
しかし、体が言うことを聞かない。
動かそうとしても動かない。
何者かに捕縛されいるみたいに。
俺はただ地に伏すことしか出来なかった。
今すぐここから逃げなけれないけないのを理解しているが、動けない。
怯えて、縮まっているのか。
それとも目の前の少女が引き止めているのか...。
すると、ついに少女が下に向いていた顔を正面にした。
俺はそれを注視することを出来ず、一瞬見ただけで逸らした。
怖気がする...。
瞳が...真っ黒だった。
「ああぁあぁぁあああぁあああああぁあああああっぁぁぁあああああああああぁぁぁああああぁあぁあ!」
俺は我慢出来ず、叫声を挙げた。
怖い。怖い。怖い。
死ぬ。死ぬ。死ぬ。
恐怖の感情を抑えきれずただ喚いた。ついには嗚咽を漏らした。
人とは思えない化け物だった...。
「ねぇ...。」
少女が呼んでいる。
しかし、恐怖というものが俺を押さえつけてそれに応えられない。
しかし、それだとどうなるか...
「ねえ...ぇっってばぁあ...!」
声を張り上げた。
例えようがなく悪魔そのものの声だ。俺はさらに恐怖し、固まる。
身体中が痙攣しているように、振動している。体温も徐々に下がって行く。
しぬしぬしぬしぬこわいわこわいやだやだやだたすけてたすけて。
そうやって目を閉じて神に願った。
しかし、目を開けるとそこに待っていたのは....
足だ。
凄く細く、白い。
しかしなぜ真下にこんなものが、と思い、顔を上げると....。
「おい...っ!」
少女の顔が目と鼻の先にいた。
こちらを睨んで、今でも切ってかかりそうな態度だった。
「うあああああぁぁあぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああぁぁあああああああああああああああぁぁああああああああ!!」
俺は無意識に地を蹴り、来た方向へと走り出した。
後ろからも微かだが足音がする。
早くしなければ...殺される!!
俺は適当に道を選択し走って走ってただ走った。
しかし、ダンジョンの出口は見つからない。もう思考回路が回らなくなった。
すると、その少女はようやく追いついた。
鎌を肩に携えている。
その鎌には漆黒の覇気が纏ってある。いかにも狂気じみている。
俺はもうなす術もなく、ただ最後の最後まで神に祈り続けた。
しかし、その願いは聞きいられてもらえない。
少女は鎌を頭上に上げ、振り下ろす体勢にはいる。
最後はかっこわるく死ぬのか....。
そして、鎌が惨く振り下ろされた。