うつ病や適応障害といったメンタルヘルス不調からの回復ばかりでなく、心身の健康を維持するためにもっとも重要なのが、安定した生活リズムです。そして、安定した生活リズムを維持するために、もっとも基本となるのが「睡眠」です。
私たちにとって身近であり、当たり前のように毎日繰り返している睡眠ですが、あらためて「睡眠とは?」と説明しようとすると、実はなかなか難しいものなんです。
そこで、今回は睡眠について解説していきます。私たちが眠っている間も、もちろん身体は活動を停止しているわけではありません。眠っている間に、私たちの身体にはどのような変化が起こっているのでしょうか。
- 実は難しい「睡眠」の定義
- 「睡眠段階」と「睡眠周期」
- 良質な睡眠のポイント
「睡眠」を定義するのはなかなか難しい
眠ったことがない人はいません。それほど私たちにとっては当たり前のことですが、いざそれを定義しようとすると簡単にはいきません。
定義の一例としては、「睡眠は人間や動物の内部的な必要から発生する、意識の一時的な低下減少であり、必ず覚醒可能なこと」といった定義が挙げられます[1]。
[1]堀忠雄編著(2008). 『睡眠心理学』. 北大路書房.
何やらわかるような、わからないような定義となっていますが、それだけ完結明瞭に言い切ることが難しいということなのだと思います。
誰もが経験的に知っているように、私たちは眠らずに起き続けていようとしても、必ずそのうちに寝入ってしまいますし、眠っている間は、自分がどういう状態にあるかを意識できません。
ですから、生体としての必要性から意識の低下減少が起こっていることは理解できます。そして、“必ず覚醒可能”なこと、という一言をつけ加えることで、「睡眠」という現象の特徴をあらわしているわけですね。
一晩の睡眠にみられる変化
私たちは、うとうとした状態から眠りにつくと、徐々に深い睡眠に入っていきます。この睡眠の深さは「睡眠段階」とよばれ、脳波の変化によって分類されます。睡眠段階は1~4まであり、浅い眠りの睡眠段階1から始まり、もっとも深い眠りが睡眠段階4となります。
睡眠段階1~4は、まとめてノンレム(non-REM)睡眠ともよばれます。
ノンレム睡眠を経過すると、次にレム(REM)睡眠が出現します。レムはRapid Eye Movementを略したもので、このときに急速眼球運動がみられることからそうよばれています。神経活動なども活発になっており、よく夢を見るともいわれています。
睡眠中にはこのような状態の違いがあり、
私たちは、睡眠段階1→2→3→4→3→2→1→REM→1→2…のように、
浅い眠りと深い眠りを繰り返しながら眠っているのです。
1回のノンレム睡眠とレム睡眠を合わせると約90分となり、一晩の睡眠でこれを4~5回ほど繰り返します。この繰り返しを「睡眠周期」といいます。
目覚まし時計をかけるときに、90分の倍数でセットすると目覚めがいいと言われますが、それは睡眠周期を意識して、レム睡眠あたりの睡眠が浅くなるタイミングで目覚まし時計を鳴らすことで、起きやすくしようとしているわけです。
睡眠周期は繰り返すごとにその内容が変化していきます。睡眠の前半では、1回の睡眠周期に睡眠段階3~4の深い睡眠の割合が多くなります。明け方から覚醒へ向かう睡眠の後半では、レム睡眠の割合が多くなっていきます。
ここまでの説明を視覚的に表すと下の図のようになります。
良質な睡眠とは…
ここまで述べてきたように、一晩の睡眠でも時間帯によってその内容が変化していきます。入眠直後には深い睡眠をたくさんとり、覚醒に向けて徐々に浅い睡眠へと移行していく流れです。
この自然な睡眠構造を保つことが、睡眠の質を良くするということになるでしょう。
ここでポイントとなるのが、最初の睡眠周期、つまり深い睡眠の割合がもっとも多くなるときに、しっかりと深い睡眠をとれているかどうかです。
睡眠時間はそれなりにとっているけれど、どうも眠りが浅い、寝足りないと日々感じている方も多いのではないでしょうか。
もしかしたら、最初の睡眠周期でしっかりと深い睡眠をとれていないのかもしれません。というのも、私たちの日常生活の中には、自然な睡眠構造を乱すような刺激や誘惑が多いため、無自覚のうちに睡眠が悪影響を受けていることも少なくないからです。
最初の深い睡眠が重要なのは、私たちの健康を維持するうえで欠かせないホルモンの分泌などが、睡眠の深さに関連して起こっているためです。良質な睡眠を確保するためには、睡眠中に生じているさまざまな身体の変化にも注目するとよいでしょう。
今回は、一晩の睡眠における「睡眠構造」と「睡眠周期」の変化について説明してきました。次回、「睡眠②」では、睡眠とともに生じている身体の変化について取り上げようと思います。ぜひ、ご覧ください。



