私たちの心身を健康に保つために、とても重要なのが睡眠です。
前回の記事(「睡眠①」)では、一晩の睡眠にあらわれる変化について説明しました。その中で、良質な睡眠のポイントとして、入眠直後の深い睡眠をしっかりとることを挙げました。
今回は、深い睡眠と関連して起きている、私たちにとってとても大切な身体の変化に注目して、以下のことについて解説します。
- 約24時間周期で回る身体のリズム
- 睡眠と関連が深い体温変化やホルモン分泌
- 生体リズムを乱すと睡眠の質も下がってしまう
身体のリズムは24時間周期より少しだけずれている
私たち(のほとんど)は、朝になると目覚め、日中に活動し、夜になると眠ります。この「睡眠-覚醒」の繰り返しが、だいたい24時間周期で回っていることは、日常生活を送っていれば実感しやすいと思います。
このような24時間周期のリズムは、実は「睡眠-覚醒」だけにみられるものではありません。あまり実感しにくいかもしれませんが、体温やホルモン分泌なども、24時間の周期で上がったり下がったりしています。
生体がもつ機構によって刻まれるこのようなリズムのことを「生体リズム」といいます。“体内時計”という言葉を耳にしたことがあると思いますが、脳にある“時計”が生体リズムを作り出しています。
生体リズムにはさまざまな周期のものがありますが、睡眠-覚醒のように、私たちが毎日繰り返す24時間周期の生体リズムは「サーカディアンリズム」といいます。
これは日本語では「概日(がいじつ)リズム」といわれます。この「概日」、つまり“概ね1日”のリズムというのは、私たちが時計を基準に1日24時間と考えるリズムとは、実際には少し誤差があることを意味します。
その後差は1時間程度とされており、私たちに備わるサーカディアンリズムはだいたい25時間周期を刻むと考えられています。つまり、1日24時間で動いている社会生活のなかでは、徐々に夜更かし気味になっていく傾向をもっているということです。
安定した睡眠を維持するためには、サーカディアンリズムがもともと少しずれていることを踏まえて日々調整すること、そして、以下に述べる睡眠-覚醒リズム以外の身体変化とのバランスを保つことがポイントになるでしょう。
睡眠-覚醒だけじゃない24時間周期のリズム
睡眠-覚醒リズム以外で、明瞭なサーカディアンリズムを示すもののひとつは「体温」です。
私たちの体温(深部体温―体の内部の温度)は、明け方(4~5時頃)にもっとも低くなり、夜間(19~20時頃)にもっとも高くなるというサーカディアンリズムをもっています。
環境や個人差による違いはもちろんありますが、一般的には24時間周期のなかで、だいたい1℃程度の変動があるとされています。
睡眠-覚醒リズムとあわせて考えてみると、20時ごろのピークを過ぎて、体温が下がっていく時間帯が一般的な就寝時間になります。そして、実際に眠りにつくと、明け方に迎える最低体温まで急激に低下していきます。
最低体温を示すと徐々に体温は上昇し始め、それとともに一般的な起床時間帯を迎えます。つまり、睡眠には体温低下が、覚醒には体温上昇が重要であるということです。
眠たくなると赤ちゃんの体は温かくなりますが、これはポカポカして眠たくなっているのではなくて、体内の熱を放出しようとしているために表面が温かくなっているということなんですね。
暑さ寒さの体感は人それぞれ異なりますが、睡眠の質を良くしていくためには、就寝時間帯に体を温めすぎない(体温低下を損なわない)ということを知っておくことが大切でしょう。
次に、睡眠-覚醒リズムと重要な関係にあるのが「成長ホルモン」です。
成長ホルモンは子供の成長を促進するだけではなく、成人になってからも分泌されており、骨や筋肉を強くしたり、疲労を回復したりする作用をもっています。
成長ホルモンは独自のサーカディアンリズムをもつわけではありませんが、睡眠に依存して分泌量が増加するという特徴をもっており、下図のように入眠直後の第1睡眠周期のうち、深い睡眠のときに分泌量のピークを示します(睡眠の構造については「睡眠①」へ)。
そのため、安定した睡眠-覚醒リズムでしっかりと深い睡眠を確保し、成長ホルモンの分泌を促進させることが、目覚めたときの「ぐっすりとよく眠れた」にとってとても大切なのです。
身体のリズムをバランスよく保つことが良質な睡眠のポイント
ここまで述べてきたように、私たちの身体のさまざまな機能が約24時間の周期で変動しています。それらのリズムは、体温のように独自に刻まれているものもあれば、成長ホルモンのように睡眠に依存して変動するものなどさまざまです。
それぞれのリズムは、互いに影響しあい、関連しあっています。それを意識して、リズムを乱さないようバランスを保つことが、良質な睡眠にとってはとても大切です。
例えば、就寝時間帯に体を温めすぎて体温低下を損なってしまうと、スムーズな入眠の妨げになります。また、入眠が妨げられると、入眠後の急速な体温低下も妨げられます。この体温低下がうまくいかないと、深い睡眠に入ることも妨げられるため、成長ホルモンの分泌にも支障をきたすことになり、結果的に睡眠の質が悪くなるといったことが起こります。
こうした悪循環に陥らないよう、日常的に身体のリズムとそのバランスを意識して、良質な睡眠を保っていきたいですね。
次回「睡眠③」では、生体リズムを意識して睡眠の質を上げるために、日常生活のなかで実際に取り組める工夫について考えてみたいと思います。ぜひ、そちらもご覧ください。




