公園を歩いていたら、足元の芝生から何かが飛び立った。最初はハエかと思ったが、ハエにしては大きな虫だった。数メートル先に落ちたので、近づいてよく見ると、スズメバチが自分より一回り小さなアブを捕獲しているところだった。
スズメバチはアブを抱きかかえながら、その体にキバを食い込ませてバリバリかじっていた。決定的瞬間に出くわしたと思って、携帯で写真を撮ろうと近づいたら、スズメバチが警戒してアブを放してしまった。そして半径1メートルほどの範囲を飛びながら、再びアブを捉える機会を伺いつつ、僕の存在を警戒しているようだった。
スズメバチに刺されてはかなわないと思い、僕はその場から少し身を引いた。彼はしばらくアブの周辺を飛び回っていたが、やがてあきらめて飛び去ってしまった。悪いことをしたかなと思いながら、アブがどうなっているのか気になって近づいてみた。
アブは、右半分の足をほとんど食いちぎられて、胴体から体液が漏れていた。芝生に埋もれてほとんど動かなかったが、拾った枯れ草でつついてみると、必死に羽ばたいてこの場から逃げようともがいた。
よく見ると、アブのすぐ横には、アブよりずっと小さな、大き目のアリくらいのサイズの羽虫が転がっていた。こちらも半分食べかけられたような状態でもがいている。この状況から推理してみると、どうやらアブがこの羽虫を食べているところを、さらに大きなスズメバチに襲われたらしい。
強いものが弱いものを食べ、さらに強いものがそれを食べる。まさに食物連鎖の生きたモデルが目の前にあった。しかしその連鎖を僕の余計な行動が断ち切ってしまった。羽虫と、アブと、スズメバチ。3匹の虫たちに少し負い目を感じた午後だった。

