こんにちは。

アスリートの能力開発に貢献する

パフォーマンスデベロッパー、

Re-Viveです。

 

前々回(立甲)は、ヒトの肩帯の進化、

前回(立甲(2))は、押し動作における立甲の利点について

Re-Viveの考えを簡単にまとめました。

 

今回は、

スポーツパフォーマンスに対する立甲の影響、

「2つ目」のお話をしたいと思います。

 

前回の記事では、立甲とスポーツパフォーマンスの関係を

なんとなく述べちゃいましたが、

そもそも、立甲が出来ると、

スポーツパフォーマンスが上がる、

という科学的根拠は存在しないと思っております。

探したけどないです。

(とはいえ、Re-Viveの論文検索能力などたかがしれてますんで、

何かあったらどなたか教えてください)

 

また、肩甲骨を上肢が動く面に合わせて動かせないと

障害が発生する、ということも言われていますが、

十分な解析による結果ではなく、考察レベルで述べられることが

多いように思います(Kibler 1998 , Braun 2009)

この辺りは私の調査不足かもしれませんが。。

 

スローイングに関しては、最近の研究から

Itami(AJSM 2018)らは

屍体肩を用いて、投球のlate cocking phaseを再現し、

肩甲骨の角度と肘内側の靭帯にかかる外反ストレスについて検討しています。

結果、肩甲骨の内旋角度が大きいと、

コッキングでの肩の外旋角度が減少し、

肘外反ストレスが増大することを示しました。

 

この辺りは、プロともなれば、

7000°/secどの角速度(Dillman 1993)が生じ、

関節面には1000Nにも及ぶ力がかかる投球時の力(Fleisig 1995 )を考えると、

当然上腕骨が肩甲骨の関節面を向いている必要があるというのは、

うなずける根拠かもしれません。

(Braun 2009より転載)

 

 

このように、

上腕骨の動く軌道を肩甲骨の関節面がしっかりと追いかけていないと、

肩関節(肩甲上腕関節)に大きな負担をかけてしまって

怪我に結びつくのですね。

 

では、スポーツのパフォーマンス面においてはどうなのでしょうか。

立甲(肩甲骨を胸郭から分離して内旋させる動き)、

という動作を獲得している人達のパフォーマンスレベルを調査した報告、

は存在しませんが、

興味深い論文は幾つかあります。

 

例えば、

Blache et al.(Eur. J of Sports Sci. 2018)が、

42名の被験者を、

成人エリートスイマー

思春期エリートスイマー

クラブレベルのスイマー

一般のコントロール

に分けて、上肢挙上運動時の肩甲骨動態を比較しました。

結果、成人のエリートスイマーの肩甲骨は、

挙上中間域で肩甲骨の内旋角度が

他の群と比較して大きいことを報告してます。

(Blache 2018より著者改変して引用)

 

肩甲骨を胸郭から剥がすことが

パフォーマンスを上げているわけではないとしても、

トップスイマーたちの肩甲骨が

他のカテゴリーのトップ選手と比べても、

肩甲骨の内旋角度が大きいことは

大変興味深い事実だと思います。

 

また、スプリントの加速局面における肩甲骨の運動制限が、

加速スピード、下肢キネマティクスにどう影響するかを、

Otuka et al.(Springerplus 2016)が報告しています。

これも他にないユニークな研究だと思いますが、

肩甲骨の胸郭上での動きを制限すると、

疾走速度が遅くなったことを示しています。

これに関してOtsukaらは、

対側上肢の胸郭に対する伸展角度が減少していることが、

股関節の伸展角度の減少と足部の前傾角度を減少させてしまい、

体幹の前傾角度が大きくなってしまうことで床半力の水平成分が減って、

スピードが落ちた、

と考察しています。

 

 

このように、

パフォーマンスにおける肩甲骨の動きの重要性は、

幾つかの研究で示されていて、

エリートスイマーの肩甲骨が、

上肢挙上時に内旋角度が大きくなることや、

スプリントの際の肩甲骨の動きが、

スピードに影響することは大変興味深いです。

 

物を押す時に、立甲ができると、

脊骨をまっすぐにしたまま床半力をもらえる、

という話を前回しましたが、

このように、上肢が固定されず自由に動かす場面でも、

肩甲骨の動きがパフォーマンスに影響を及ぼすことは明らかなようです。

 

個人的には、この全てに、

肩甲胸郭関節で作られた動きが上肢末端に伝達すること、

を重視していて、これを実現するには、

胸壁から肩甲骨を分離して

自由に操作する能力を習得すること、

が重要だと考えています。

 

結果、立甲のようなパフォーマンスが実現可能なのであって、

立甲ができるからパフォーマンスが上がる、

というものでもないと思います。

以上、立甲についての考えをまとめてみました。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

次編は背骨について考えてみたいと思います。

 

 

参考・引用文献

・Kibler WB. The Roll of the Scapula in Athletic Shoulder Function. AJSM. 26; 2 :1998: 325-337

・Braun S et al. Shoulder Injuries in Throwing Athletes.JBJS Am. 91; 2009: 966-978

・Itami Y et al.  Effect of Increased Scapular Internal Rotation on Glenohumeral External Rotation and Elbow Valgus Load in the Late Cocking Phase of Throwing Motion. AJSM. 46; 13; 2018: 3182-3188

・Dillman CJ et al. Biomechanics of pitching with emphasis upon shoulder kinematics. JOSPT. 1993;18:402-408

・Fleisig GS. Kinetics of Baseball Pitching with Implications About Injury Mechanism. AJSM 23; 2; 1995:233-239

・Blache Y et al. Scapular kinematics during scaption in competitive swimmers. Eur. J of Sports Sci. 18; 5; 2018; 659-666

・Otsuka M et al. Scapula behavior associates with fast sprinting in first accelerated running.SpringerPlus 5; 2018 :682

 

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