中日新聞2014/2/25記事参照
「発達障害、等身大の理解を 啓発プログラムで親を支援」
市民団体開発 ほめる大切さなど伝授
地元支援者(左側)と相談しながら、シートを作成する親たち。奥が辻井正次さん=福島県相馬市で
子どもが発達障害と診断されたり、育てにくさを感じたりしている母親たちの早期支援を目指して、専門家、親の会などでつくる日本発達障害ネットワーク(JDDネット)は、厚生労働省と連携して「ペアレント・プログラム」を全国に広げる活動を進めている。難しい専門用語は使わず、子どもをほめたり、努力しているところを見つめたりしながら、等身大の姿を理解しようという試みだ。(編集委員・安藤明夫)
1月下旬、福島県相馬市の保健センター。同市と同県南相馬市から、発達障害児の親や地元の支援者ら約30人が集まった。
5回連続のペアレント・プログラムの3回目。中京大教授の辻井正次さん(50)=発達臨床心理学=が進行役を務め、前回に出した宿題の発表を聞いていく。
子どもの「いいところ」「努力しているところ」「困っているところ」について、家で気付いたことをまとめるのが宿題だ。初めのうちは「いいところ」が思い浮かばずに、困っていた親たちも「朝きちんとあいさつできる」「食事の後、茶わんを片付ける」など、内容が多彩になってきた。
「ほめること」は、同プログラムの大切なポイント。子どもや夫をほめる練習をするだけで、子どもが落ち着いたり、母親自身の気分の落ち込みが軽くなったりする場合もある。
書き込む際に大切なのは「形容詞を動詞にしていくこと」。「明るい」ではなく「明るくてよく笑う」。「ピーマンが嫌い」ではなく「ピーマンが嫌いで食べようとしない」などと、行動を見る練習をすることが理解の第一歩だ。
行動の問題点がはっきりすれば、そこから改善の取り組みを考えていく。「苦手なこと」の中から「努力している部分」に注目し、ほめることで「いいところ」に変わっていく-という好循環をつくるのが目的だ。学校の教師などに子どもの問題を伝える際にも役立つ。
この日は、シートに書いた内容を分類する練習もした。「母親との関係」「友達との関係」「身辺自立」など、項目を立てて問題を整理する。親がペアになって話し合ったり、支援者も入って一緒に考えていく。
「時間」で分類していくと、母親が夕食の準備で忙しい時間帯に、子どもが落ち着きをなくすなどの傾向も浮かび上がった。
2月21日の4回目の講座では、支援者たちから「親たちの観察眼が鋭くなった」という感想が多く寄せられた。
親が参加するのは毎回1時間。その後、辻井さんと地元の支援者が、講座の進め方、親のペアの組み方などを相談する。2014年度以降は、地元支援者たちだけで講座を進めていけるようにするのが目標だ。
相馬市で障害児の放課後デイサービスの機関を運営する菅野友美子さんは「乳幼児健診の際、プログラムの一部を使う案もある。皆で相談しながら、取り入れていきたい」と話す。
南相馬市では原発事故の影響で子どもの数が激減したが、環境の変化が苦手な発達障害の子は避難先から地元に戻ることが多い。教育現場の混乱も目立つことから、親への支援が急務になっているという。
同プログラムを開発したのは、辻井さんが代表を務めるアスペ・エルデの会(名古屋市)。当初は「ペアレント・トレーニング」の名称で家族支援を目指していたが、指導できる人に限りがあり、全国的な広がりが難しいことから、その「入門編」の形で新たに設けた。
JDDネットは東日本大震災直後から福島県を中心に支援活動を続けている。学校での活動が一段落したことから、同プログラムの普及に重点を移した。福島のほか、宮城、愛知、岡山、鳥取の各県でも実施している。
辻井さんは「発達障害に限らず、子育てに苦しみ、イライラを募らせるお母さんたちにも、広く役立つプログラムだと思う。指導できる人材を増やしていきたい」と意欲を燃やす。
発達障害 自閉症、アスペルガー症候群、学習障害、注意欠陥多動性障害などの脳機能の障害で、その症状が通常低年齢で発現するもの。2004年に発達障害者支援法が制定され、特性に応じた医療・福祉・教育の援助体制が少しずつ整ってきた。周囲の理解不足が子どもたちの心を傷つける場合もあり、障害の早期発見や療育が重要だ。
【コメント】
得意なことと苦手なことを周囲にわかってもらうことが、
生活をしていく上でとても重要なことではないかと思います。
そこで、いいところも困っていることもまずは
見つけていくことが大切なのではないかと思います。