前回、「国という枠」で考える事が出来ない、主語が「日本」になると思考停止する、そういう人にも「都道府県」に置き換えて話をすると、理解を促す事が出来る(場合がある)という話をしました。



今回は、「どう説明しても分からないであろう人」の方の話になります。




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ある年の正月。例年の「親族の集まり」の時の事。

私も含め、従兄弟達もほとんどが社会人となり、結婚している者も増えていった。飲み食いしながら話す話題も、勤め先や仕事の話が自然と多くなっていた。

その中で年上の従兄弟の、「勤め先の事務員とのやり取りで非常に困った」との話が挙がった。

その話を一文で要約すると

「どれだけ説明しても、韓国人である・外国籍である、という事が理解して貰えなかった」

…という事だ。

従兄弟から聞いた、その事務員とやり取りを台詞として書き出すと、この様な感じだ。


事務員「◯◯さん、『本籍』が『韓国』って、どういう事なんですか?(⁠˘⁠・⁠_⁠・⁠˘⁠)」

従兄弟「えっ…?(⁠‘⁠◉⁠⌓⁠◉⁠’⁠) あ、いや、僕は韓国人なんで、本籍っていうと『韓国』になるんで…」

事務員「何でそうなるんですか? どういう意味ですか?(⁠˘⁠・⁠_⁠・⁠˘⁠)」

従兄弟(どういう意味って、それは俺の言う台詞やろ(⁠‘⁠◉⁠⌓⁠◉⁠’⁠)…) 

従兄弟「ええと…僕は日本で産まれ育った『在日韓国人』なんですよ。◯◯って名前ですけど、本名は□□といいまして、ですから日本人ではないんですよ。」

事務員「でも日本で産まれ育ったんですよね? だったら日本人ですよね?(⁠˘⁠・⁠_⁠・⁠˘⁠)」

従兄弟「いえ…韓国人ですが。 僕は祖父母が日本に渡ってきて、父と母も日本で産まれて韓国人同士で結婚したんですよ。親が両方韓国籍なので、僕も韓国籍になります。」

事務員「…は? ご両親が韓国籍でも、◯◯さんは日本人ですよね?⁠(⁠ò⁠_⁠ó⁠ˇ⁠)⁠」

従兄弟「!???(⁠‘⁠◉⁠⌓⁠◉⁠’⁠)」






従兄弟は困惑を通り越してもはや混乱の域だったが、それでも思いつく限りの説明をした。

パスポートも日本国ではなく大韓民国、自分はまだ帰化してないので日本国籍ではない、そもそも会社に提出した外国人登録証明書に「外国人」と書いてある…等。
(この話は「在留カード」が施行される数年前の出来事である。)

事務方の女性はどう説明しても分かってくれず、挙げ句に彼女の口から出た台詞は


事務員「なら、『韓国籍の日本人』ってことでいいですか?⁠(⁠ò⁠_⁠ó⁠ˇ⁠)⁠」

従兄弟「………………(⁠‘⁠◉⁠⌓⁠◉⁠’⁠)」




そう言われてしまった従兄弟は

この時点で説明する事を諦めた。







事務方の女性は、「本籍」の欄に「韓国」と書いてあるのがどうしても理解出来なかったようだ。

価値観とか文化的にとか、内面云々の話ではなく、「国籍が韓国」という話が通じないというのは、当事者である従兄弟は勿論のこと、話を聞いている私等親族にとっても初耳だった。

従兄弟は「自分の説明が悪かったのかも」と言っていたが、きっとそういう事ではない。

おそらく、彼女の感覚としては

従兄弟の言う「両親が韓国籍なので自分も韓国籍で外国人」というのが

「群馬県で産まれ育ったけど、両親は東京出身だから私は東京都民」…と、言ってる様な感じに聞こえるのだろう。

「韓国籍の日本人」というのも、上記の例えに沿って言えば「本籍が東京の群馬県民」の様な捉え方なのだろうと思われる。

この事務方の女性の場合、「本籍の捉え方」で混乱したとも言えるかもしれないが、私としては都道府県の枠でしかイメージ出来ない、「国という枠で考える頭」がホントに無い人なのではないかと思う。きっとこの人には国単位の話は通じないだろうし、「国籍」すら理解出来ないのではどうしようもない。


一般的に「在日韓国人」と言えば、私達「特別永住者」を指すものであったが、それも帰化と死亡による減少で、もう30万人程しかいない。故に在日韓国人と言っても分からない人も、増えていくのかもしれない。

だがしかし

従兄弟の話の様なケースは御免こうむりたい。



本日は以上です。