海外からの訪問者を神宮に案内することもある。
単なる興味本位のビジターであれば、表層的なテーマパーク案内風でも良いかもしれない。
しかし、なぜ、なぜ?を繰り返す訪問者も増えている。
彼らは、ここが実に不思議な、疑問の多い神宮であることを感じている。
この複雑な過去を持つ、日本の政治に大きく関係してきた神宮をどう説明するか。
英文で配布されている案内パンフでは、まったくそれらに答えていないのだ。
2016年 サミットでは、首相は各国首脳を神宮に呼んだ。
国内では、ほとんど報道されていなかったが、各国の反応が示されるきっかけにもなった。
それは、首相の発言「各国首脳は日本の歴史、文化、自然に触れ感激した」 とは、少し
イメージがちがうのものでもあった。
ある首脳は、とても「Keen」であった。相当気を使ったという表現もある。
世界の国では、政治と宗教の関係については、非常に敏感である。テロや紛争の大きな原因にもなっている。国家首脳が、特定の宗教法人を案内することは、常識では考えられない。
困惑のなかで、各首脳は気を遣ったコメントを出したようだ。下手なコメントを出して自国報道に叩かれたくない。当然、御垣内参拝は避けた。それを勧めること自体、相手の立場を考えず、おもてなしの考えがまったくないことを示しているのだが。
もちろん日本の報道は、事なかれ記事を並べた。いつものようにこの手のことには何かが配慮される。
一方、海外、The Guardian (英国の代表的な新聞、報道)では、日本の首相と神道との関係、日本会議の存在、首相が各国首脳を連れていく背景を述べた。靖国参拝の問題まで挙げている。
ジョン・ブリーン氏(国際日本文化研究センター准教授、神道国際学会理事) の解説を載せ国家神道と戦後の宗教法人化など記述している。
しかし、このような事柄の積み重ねによって、歴史的に隠されてきた神宮の姿があきらかになっていく。それを、海外の人たちが進めることは、非常に興味深い。感傷的なバイアスがない論理的分析が行われる。日本の某会議など権威筋は、海外の研究成果に対して無力であることをさらすだろう。
先のジョンブリーン氏は、京都にて活動する立場上かなり気を配った表現をしている。
しかし、伊勢神宮を訪れることで日本を知ってほしいという首相のアイディアは、時間とともに、これからどのような姿を掘り出していくのであろう。 また、それが日本にフィードバックされることでどのような反応がでるのであろう。 日本国民の伊勢神宮を、世界の知識人の前に引き出した。 最初は、表面的な感想が多いだろう。しかし、徐々に、関心が深まり、論理的な追及に入っていくであろう。それは、多くの日本人がやらない方法でもある。
パンドラの箱を開けたのは、だれあろう日本国首相である。
PS
そして、海外でも皇室の話題が増えるでしょう。
伊勢に祀られている天照大御神は、皇祖として、天皇の先祖とされてきた。
戦後の昭和天皇による「人間宣言」で、それは否定された形であるが、ならばなぜ、天皇や皇室は伊勢を参るのか。
自民党首脳はなぜ、伊勢を参るのか。
神道政治連盟国会議員懇談会 には、首相はじめ多くの議員がメンバーになっています。
明治以降の皇国史観が、続いているのでしょうか?
神宮によると、「皇大神宮は、皇室の御祖先であり、我々国民から総氏神のように崇められる天照大御神をお祀りしています。」
という表現で、天照を皇室の祖先であり、国民の総氏神という表現をしています。
戦後、国家宗教から、一つの宗教法人に変わったわけですが、あくまでもGHQむけの対策であったのかな。
いま、神宮は、「日本人のこころのふるさと」という表現でを使って、[天皇の祖先は神なのか]という論をぼかしています。
一つの宗教法人が、このような表現を使うのは微妙ですが、なんとなく納得することはあっても反論はないのでしょうね。
今後、海外でもこのことが話題になる機会が増えるでしょう。
PS
2017年発行の英語圏向けの著書: A social history of the Ise shrines
引用: There was once again a striking absence of debate about the possible constitutional implications of Ise re-entering the public stage. This event offers further evidence that in the hands of Prime Minister Abe Shinzō, Ise’s divine capital is entering a new cycle of development.
Teeuwen, Mark. A Social History of the Ise Shrines (Bloomsbury Shinto Studies) . Bloomsbury Publishing. Kindle 版.