とにかくギュウギュウ詰めで、他人との距離が異常に近い。
おまけに「いやいやこれ以上無理だって!」っていうのに、容赦なく客が乗り込んでくる。
そこで重要となってくるのが、車内でのポジション取りだ。
これに失敗すると地獄を見ることになる。
先日はこのポジション取りに見事に失敗。
他人との接触が少ない壁際を狙っていたのだが、
下車する客が思いのほか少なく、無理やり車内中央に押しやられてしまった。
そして不運にも、目と鼻の先にはツルッパゲのオヤジの後頭部が…。
ギュウギュウに圧迫されて身体の向きが変えられず、
取り敢えず次の駅まではこのツルッパゲを強制的に眺めなければならなくなった。
「これは修行だ…」と自分に言い聞かせ、必死にツルッパゲを眺めていた、その時だった。
右肩に何やら感触が。
どうやら、真後ろにいる何者かがワタクシの肩を土台にしてスマホをいじっているらしい。
なんて奴だ!
キッと睨んでやろうと振り向いたつもりが、歳のせいで首の関節が硬くて30度くらいしか回らない。
それでもどうにか奴が視界に入ったのだが、
これまたツルッパゲのオヤジであった。
何ということだ。
ハゲがハゲにサンドイッチされているという、何ともおぞましい光景。
ハゲの後ろにハゲ、そのまた後ろにハゲ…。
ハゲの一列縦隊、小さく前に習え状態。
まさに、ハゲの壮大なる三大ピラミッド。
これがご婦人だったならば「どうぞどうぞ、おやんなさい」となるのだが、相手が相手だけに、
「スマホどけんかい!このツルッパゲ野郎!」
と自分のことは棚に上げて糾弾してやりたい衝動にハゲしく駆られた。
しかしながら、そんな負の感情を必死に抑え、どうにか次の駅まで耐え抜いたのである。
そしてひとたび駅に到着すれば、ドアが開いて客の乗降があるので、この時がポジションをリセットする絶好のチャンスなのだ。
「ピンポ〜ン」
よし、ドアが開いたぞ。
立ち位置がドアに近いので、取り敢えず一旦ホームに降りよう。
…下車する客が一通り出たな、よし乗り込むぞ!
ん?思ったよりスペースが無いぞ?急げ!
イテテ、押すなって!
そして再び車内中央部でギュウギュウ詰めになって身動きが取れなくなった…。
え?何で?
立ち位置がリセットされたはずなのに、
目の前に現れたのはさっきと同じ、ツルッパゲのオヤジの後頭部であった。
…これはもはや不運ではない、奇跡だ。
そう自分に言い聞かせ、再びツルッパゲを凝視しながら次の駅に向かって満員電車に揺られて行ったのであった…。
もしかして…と思ったが、後ろを振り向く気力は無かったのである…。
そんな毎日の窮屈な満員電車ストレスを解消するには、やはり広〜い海へ出かけるのが一番だ。
というわけでやって来たのは、お馴染みT浜の船溜り。
今回は投げ釣り主体でカレイ・真鯛を狙い、夜明けからショアジギングでブリなどの青物にも手を出す予定。
タモ網出動させないといけないからね〜
AM4時頃から開始し、1投目から竿先を叩くようなアタリが続く。
そのアタリの主は…
「あなごめし うえの」を支えて来た大野瀬戸のアナゴだ、これは持ち帰ろう。
続いて…
本命の真鯛だが、チャリコをひと回り大きくしたくらい…。
しかーし、「小さくても鯛」である。
ん?腐っても鯛、だったっけ?
お土産が無いと困るのでこれも持って帰ろう。
有るのと無いのとでは、帰宅時の玄関ドアの重さが違う。
しかし、
「大物狙いで」と銘打っておきながら、外道やリリースサイズばかり持って帰りやがって、と思われるかも知れないが、
本来釣りとは「狩り」であり、お互いが命をかけた「闘い」である。
敗者である釣り上げた魚に対しては、最大限に敬意を払い、健闘を讃えるべきである。
どんな外道であっても、
どんなに小さな魚であっても、
「なんやお前かぁ、ポイ!」
「ちっせー、ポイ!」
ではない。
まずは「釣れてくれてありがとう」だろう。
そして傷付けて逃がしてやるくらいなら、食して我が細胞の一部となって生き続けてもらう方がいい。
そーだ、そーだよ。
よし、今日からは釣り上げたものは全て持ち帰ろうではないか。
それが真の釣り人ってものだ。
えーっと、持ち帰ったほうがより良い。
えーっと、極力、持ち帰れれば持ち帰ったほうが良い、ケースもある。
…食べれる奴だけ持って帰ろう。
結局この日はアナゴ、小鯛、そして最後にベラを追加。
肝心の青物は不発…。
対岸のオジサンとお祭りしたのを機に、納竿した。
さて、貴重な命はしっかりと頂きます。
そういえばこのベラ、模様はメスだが、全体的に緑がかっており、頰の部分は何となくオスのようでもある。
〝性転換〟するのがベラの特徴なので、もしかしたらその最中の個体なのかもしれない。
まずは小鯛とベラは刺身にしたが、ベラの刺身は弾力があって小鯛よりも美味。
アラは潮汁に、アナゴは穴子丼にして晩飯へ。
本日のヤケ酒は、「木槽絞り純米酒ほまれ池月」。
酒蔵は島根・邑南町の池月酒造。
手間と技術を要する木槽で絞った限定酒。
香り爽やか。
味はズドーンと突き抜けてサッパリと口から消える、まるで打ち上げ花火のような味わい。
はぁ、明日からまた満員電車に揺られるのかと思うと…




















