先週末のこと、
鏡に映った自分の顔に、何となく違和感を感じた。
頭頂部の違和感については、とっくの昔に水平線の彼方に葬り去っているので、そこではない。
よくよく見てみると、
何と、もみあげの長さが左右で違っているではないか。
しかも、ちょっとやそっとではない。
3センチくらい違っていたのだ。
…おい待て、一体いつから?
前回の散髪が8月くらいだったから、
え?そんなに前なの?
ヘタをすると数ヶ月もの長きにわたり、この醜態を公衆の面前にさらしてきたことになる。
ああ、何ということだ…
あの散髪屋め、波動砲で破壊してやろーか。
普段、意図的に鏡を見ないようにしている為にこんなにも発覚が遅れたわけであるが、
鏡を見ると、涙が止まらなくなるから…
しかしまあ、
職場でも家族でも、誰か教えてくれたって良いではないか?
いや、そもそも気付かれていないのか?
皆そんなにワタクシに興味が無いとでもいうのか?
いや、無くて正常です。
にしても、あまりの情けなさに、
近所に青木ヶ原樹海でもあれば分け入って引きこもるところだったが、
幸い近所に有るのは海である。
そうだ、海へ行ってこの事は忘れよう…
ふらっとやってきたのは南吉島釣り公園。
さすがに日曜日ともなれば、隙間を見つけるのにも苦労するほど人で一杯だ。
とりあえず今日はサビキでママカリかコノシロでも釣って、酢締めでも作ろうかなと。
しかし、釣れるのは5㎝にも満たないマイクロヒイラギ。
しかも、アミエビをカゴに詰めて海に落とすと、
海底に着く間にサビキの6本鈎のほぼ全てに食いつくか、引っかかってくる。
おそらく、全層におびただしい数のマイクロヒイラギの群れが居るらしい。
ウキを付けてタナを調整してもこの有り様。
海に落とす。
一発でマイクロヒイラギが掛かる。
巻き上げる。
マイクロヒイラギをむしり取って海へ投げる。
アミエビを詰める。
海に落とす。
一発でマイクロヒイラギが掛かる。
巻き上げる。
マイクロヒイラギをむしり取って海へ投げる。
アミエビを詰める。
海へ落とす。
一発でマイクロヒイラギが掛かる。
巻き上げる。
マイクロヒイラギをむしり取って海へ投げる。
アミエビを詰める。
ちょっと待てーい!
これ以上続けると間違いなく発狂する。
ここは一度腰を下ろして気持ちを少し落ち着かせよう。
改めて釣り場を見渡すと、
両隣には今日初めて釣りに来ましたっていう感じの父子連れ。
サビキカゴにアミエビを詰める手つきも、リールを巻く手つきもたどたどしい。
そして同じようにマイクロヒイラギを釣り上げては、水汲みバケツへ入れていく。
どうやら持ち帰って食べるつもりらしい。
はぁ、こんな初心者だらけの場所来るんじゃなかったな、と溜め息が出た。
しかし印象的だったのは、子ども達がものすごく楽しそうにはしゃいでいる事だった。
マイクロヒイラギが鈴なりに掛かって上がってくると、もう子ども達は大興奮。
「お父ちゃんスゴーイ!いっぱい釣れたねー!」
「うわー!また釣れたよー!大漁じゃねー!」
「見て見てー!お魚いっぱい泳いでるよー!」
…と。
そうか、覚えてないけど、ワタクシが初めて釣りをした日も、こうだったのかもしれないなぁ。
彼らはまさに今、初めて自分達の手で海から魚を釣り上げる、その興奮を味わっている。
5㎝にも満たないマイクロヒイラギでも、子ども達にとっては「大きな獲物」なのだ。
魚の種類や大きさなんて、今の彼らには関係無いのである。
もしかしたら、今日があの男の子にとって、これから何十年と続くアングラーへの、記念すべき第一歩なのかもしれない…。
そう思うと、熱いものが込み上げてきてゲップが出そうになった。
初心忘れるべからず…
ビギナーで賑わう南吉島釣り公園は、
忘れかけていた何かを思い出させてくれたようで、
なんだか今日はここへ来て良かったなぁ、とシミジミ思ったのであった。
そしてついでにもみあげ長さ違ってた事件も思い出した。
よし!
気を取り直してワタクシも釣り再開と行きますかな!
しかしながら結局マイクロヒイラギが延々と釣れ続いたのであった…