昭和61年発行の

 
『塀の中の懲りない面々』
 
当時、大ベストセラーになりましたので、タイトルは知っておりましたし、作者の安部譲二氏はちょくちょくテレビに出ていらしたので、お顔も存じておりましたが、著作は初めて読みました。
 
まぁ〜〜面白いですビックリマーク
 
ならず者の作者が、実刑をくらった府中刑務所の塀の中で出会った数々の、捨て置いてはおけない個性的な面々との交流を描いたエッセイです。
 
しょっぱなに登場するのは、城崎勉という、目に炎を宿したハンサムな若者。まだ刑期が4年も残っているのに、工場のわずかな休み時間にも、通路を走り回って身体を鍛えています。
 
訝る筆者や他の受刑者なのですが、この青年、日本赤軍という反政府的政治組織の一員で、逃亡を企てていたのです。
 
そして本人の予告通り、仲間がダッカで日航機ハイジャック事件を起こし、その人質と引き換えに、アラビアへと悠々と脱獄して行きます。
 
16億2000万円の入ったトランクを片手に、ツルのマークの飛行機を空港に待たせ、颯爽と飛び立って行く城崎勉。
 
そのショックで、すっかりと虚脱してしまう安部譲二と残された受刑者たちでしたが…
 
そんなエピソードからはじまり、その後次々と展開される監獄でのリアルな生活や、登場する一癖も二癖もある人物たちとの出会い、お腹を抱えて笑い出したくなるような出来事、また背筋も凍るほどの孤独や悲しい過去、それにもちろん犯罪…それらが無骨でありながら茶目っ気たっぷりの、独特な筆致でテンポよく語られていきます。
 
おカマに外国人、テキ屋にチンピラ、詐欺師や薬の常用者…無法者ながら一本スジが通った大人物ばかり。そのスジの入り方が、それぞれオカシイからこんなところに閉じ込められている訳ですが、皆さんそのサガをちっとも悪いとは思っていない様子。まさに盗人にも三分の理、と言われるごとく。
 
作中の筆者の反応や言動も、逐一予測不能で、時に暖かく時に残酷、読み始めたら止まりませんでした。
 
久しぶりに、読みたい本がある幸せ。1日の中で時間を見つけてはチョコチョコ読んで、数日で読み終わってしまいました。
 
はぁ、面白かったニコニコ音譜
 
タイトルに【懲りない】とありますが、府中刑務所は再犯専門の刑務所。かなりの確実で、出所後ほとんどはまた塀の中へと戻ってしまうそうです。
 
 
気になってネットで調べると安部譲二さんはまだまだ娑婆でご健在、その後著作を沢山出されていました。素敵なホームページを開設され、出版が出来ないような自由な作品はこちらで発表しているとのこと。


こちらもしばし読みふけってしまいました。
 
 
こんなに面白い本を読まずにいるのは勿体無いので、もしまだ読んだことのない方、何か面白い本ないかなぁって方は是非手に取ってみてくださいビックリマーク

(私は母が入院している病院の、図書コーナーで借りて読みました。病院にはたいてい図書コーナーがあるようなので、いま入院や通院されてる方は是非足をお運びになって、とっておきを見つけてくださいニコニコ