幻想的なニューヨークの街を走るイエローキャブの運転手、トラヴィス・ビックルの物語
主演はロバート・デ・ニーロ、監督マーティン・スコセッシの名タッグが生み出すドラッグムービー
年末恒例としたい名作紹介1発目。
「タクシードライバー」
1976年公開 / 114分 / アメリカ (原題:TAXI DRIVER)
監督: マーティン・スコセッシ
脚本: ポール・シュレイダー
製作: マイケル・フィリップス/ジュリア・フィリップス
音楽: バーナード・ハーマン
撮影: マイケル・チャップマン
編集: トム・ロルフ
製作: ビル・フィリップス・プロ/イタロ・ジュデオ・プロ
配給: コロムビア映画
キャスト
ロバート・デ・ニーロ/シビル・シェパード/ピーター・ボイル/ジョディ・フォスター/アルバート・ブルックス/ハーヴェイ・カイテル/ジョー・スピネル/マーティン・スコセッシ/ダイアン・アボット/ヴィック・アルゴ/レナード・ハリス他
ニューヨークの夜を走るひとりのタクシードライバーを主人公に、現代都市に潜む狂気と混乱を描き出した傑作。ベトナム帰りの青年トラヴィス・ビックルは夜の街をタクシーで流しながら、世界の不浄さに苛立ちを感じていた。大統領候補の選挙事務所に勤めるベッツィと親しくなるトラヴィスだったが、彼女をポルノ映画館に誘ったことで絶交されてしまう。やがて、闇ルートから銃を手に入れたトラヴィスは自己鍛錬を始めるが、そんな彼の胸中にひとつの計画が沸き上がる……。P・シュレイダーの脚本をM・スコセッシが監督し、独特の雰囲気を持った“現代劇”を造り上げた。トラヴィスのキャラクターはあまりにも強烈で、70年代半ばから映画ファンとなった男たちにとってデ・ニーロは松田優作と並ぶヒーローになった。これが遺作となったB・ハーマンのスコアも驚異的で、特にトム・スコットのアルト・サックスが冴え渡るメイン・タイトルはあまりにも秀逸。カンヌ映画祭グランプリ受賞。
(allcinemaより抜粋)
Wikipedia:タクシードライバー
海外版 : Taxi Driver
*****
そんなわけで去年も年末にやっておりました
思い出映画を何本かやっていきたいと思います。
本作も一度記事は以前アゲてましたが
またしっかりとレビューしていきたいかなと思います。
(※ネタバレ、考察ありなのであしからず)
最初に観たのは中学の頃でした
夜中のテレビのロードショーで
ニューヨークの街を車で流していく映像とジャジーな音楽を
コタツにくるまりながら観ていたのを覚えています
では、オープニングから行きましょう
サックスとオケの素晴らしいサントラ
手掛けたのは名匠バーナード・ハーマン
本作が彼の遺作であり本作を完成させて12時間後にこの世を去った
ニューヨークの街にかかる蒸気の中、タイトルが現れ
山吹色のタクシーが街の中へ溶け込んでいく
濡れた舗道とネオン
運転するのは主人公トラヴィス・ビックル=ロバート・デ・ニーロ
オープニングではもうタクシーを運転する彼が映し出されるが
物語は彼が運転手の募集の面接シーンから始まる
オープニングで運転するトラヴィスが映し出されるのにはちゃんとした理由がある
それは最後の方に説明しよう
面接のシーン
面接の男は個性派ジョー・スピネル
「ゴッドファーザー」に出演後、本作、また同年に公開された「ロッキー」にも出演し
70年代のレジェンド映画に軒並み顔を出しているという強者
面接ではトラヴィスの自己紹介も兼ね
過去を知ることが出来る
ベトナム帰りの帰還兵
26歳
夜、寝れないので
寝れないなら仕事でもしようとタクシードライバーを受けに来た
これまでは寝れない日々は本を読んだり映画(ポルノ)を観に行ったりしていたようだ
晴れてタクシードライバーになり
ニューヨークの夜の街を流す
フロントガラスの雨粒に光る街
音楽も映像とマッチしてとても好きなシーンです
しかしそこに映る娼婦やたむろする若者のことを
トラヴィスはいいふうに思っていない
というか憎しみを込め排除したいとまで思っている
特に黒人に対しては冷ややかな目で見、挨拶すらしない
ドライバー仲間たちが談笑する場でも
黒人とは口もきかない
そんな嫌悪するニューヨークの街で
眠れない日々を過ごしている
ある日トラヴィスは次期大統領候補の事務所で働くベッツィー=シビル・シェパードを見つける
最初は車の中から眺めているだけだったが
事務所に押し入りベッツィーの下で選挙の手伝いがしたいと声を掛ける
変わった人だと思いながらもトラヴィスに惹かれるベッツィー
トラヴィスは映画に誘うが
誘った映画はなんとポルノだった
途中で退席しトラヴィスに怒りをあらわにするベッツィー
しかしトラヴィスは何故怒るかがわからない
ベッツィ―はそれ以降彼に会わなくなる
トラヴィスはベッツィーと喧嘩する前に
大統領候補のバランタインを乗せたことがあった
「あなたを応援している」とトラヴィスが言うと
バランタインは君の要望を聞かせてほしいと言う
トラヴィスは日ごろのうっ憤、夜の街のこいつらを排除してほしいと言う
難しい問題だと言うバランタイン
しかし君の考えは聞いておくと握手を交わす二人
しかし彼の演説に行っても
トラヴィスと主張など言うはずもない
とある日は
浮気している女房を殺すというスコセッシ似のw
男を乗せる
監督ご本人が変人を演じているw
寝れない日々、そしてストレスのたまる仕事をしているうちに
次第にトラヴィスは壊れていく
以前より予兆させるシーンは前半からある
それは催眠にかかるかのように
一定間に続く青信号や
グラスの泡を見つめるトラヴィスなど
不眠症も原因ではあるが
決定的に彼を追い詰めていったのは「孤独」である
銃を購入し武装する
部屋でひとり体を鍛え、
鏡の前で仕込み銃を構える
そして鏡の自分に問いかける
「You talkin' to me?」(俺に用か?)
そして部屋でひとり
テレビから流れるジャクソンブラウンの「レイトフォーザスカイ」を
無表情のまま聞いている
テレビの画面には
チークを踊っている大勢の黒人男女たちが映っていた。。
次期大統領候補バランタインやベッツィーたち
そして夜の街に群がる輩たち
彼等に対し嫌気がさし
とある計画を行動に移そうとする
次期大統領暗殺
最初は衝動だけで部屋でまねごとをし、
演説現場のSPをからかうくらいだったが
髪をモヒカンにして戦意を見せつけるトラヴィス・・
ちょっとトラヴィスの話しをしよう
はたして彼が起こしていったことは間違ったことなのか
確かに人に対し見下すところもあり
独りよがりの偏った正義を持っている
こういう男はどうしても世間から浮いてしまう
戦争体験、不眠、孤独が、
彼をここまで走らせてしまったのかもしれないが
根本は正義感の強いナイスガイなのだ
だから彼は
自分が間違ったことなど思ってもいないのだ
私たちの世間の偏見で
彼は狂っているかのように思っているが
狂っているのはトラヴィスなのか
それとも世間なのか
それから彼にとっての運命の出会い
堕天使アイリス=ジョディ・フォスターのと出会い
12歳の娼婦
ファーストコンタクトはヒモのスポーツ=ハーヴェイ・カイテルから逃げようと
トラヴィスの車に乗ってきたところから始まる
しかしすぐスポーツがやってきて
「じゃまをした」とくしゃくしゃの紙幣を渡される
それから街でたまに見かける彼女を気にするようになる
客として彼女に会い話をする、
初めて会った時の話をトラヴィスはするが彼女は覚えていない
喫茶店でも逢い、
辞めろと説教
話していくうちに
無表情の仮面を取るアイリス
トラヴィスに心を許していっているのを表情で見せる演技
アイリスは一緒にコミューンに行こうと誘うが
トラヴィスはこう言う
「大事な仕事がある」
しかし、
彼はバランタインの襲撃は未遂に終わってしまう
逃げとおせたトラヴィスは
アイリス奪還へとハーレムへと向かう・・
ここからの描写は激しい銃撃がある為、色彩を少し落としている
そのままの画質だとX指定(18歳以上)になりそうだったので
色を落としてR指定(15歳以上)にしたと言われている
しかしこの乾いた色合いが
逆にカッコよい
そしてラストである
よく彼は死んだのか、死んでないのかは物議を呼ぶが
私は「死んだ」派だ。
以前は生きてる派だったが何度か観ているうちに変った
彼が気を失った時に
カメラは上からのアングルに変り、
そのままカメラはマンションを出ていき、空へと上がっていく
つまりはトラヴィスの魂が彼から離れ天へ召したことのアングルだ
すると、その後のトラヴィスが生きていた話はなんなのか
トラヴィスの妄想にしても彼自身が死んでいるので妄想なんて見ることも無い
生きているストーリーは「if」の世界ではないかと思う
つまりはパラレルワールドだ
生きていたトラヴィスの頸筋には銃痕が見えるので
銃撃自体はあり、そこから生き返った世界になる
その世界でベッツィーを乗せ、金もとらずに車を出す瞬間
トラヴィスが人の気配にバックミラーを一瞬チラっと見る
これは死んだ世界のトラヴィスが見に来ていたのではないか
その目線は
我々観客とかぶる。
そして、
車はまたニューヨークの街へと溶けていきエンディングを迎える。。
このエンディングもまた
オープニングのニューヨークの画と重なるように撮っている
つまり、エンディングがそのままオープニングに繋がりループしているようになっている
最後の生きているトラヴィスのエピソード自体がエピローグになっているのだ
本編自体は
トラヴィスが死にマンションから天へ召していくところで終わっていたのだと思います。
そしてこの物語がループしているというのは
この物語自体が夢のような
ふわふわした話にしたかったからだと耳にしたことがある
この物語の脚本家のポール・シュレイダーは
自分の不眠症だったときの経験を物語として
本作を書いたと言われている
本作は当時も評価が高く
この年のカンヌ映画祭パルムドールを受賞
そして同年のアカデミーは
「ロッキー」だ
ベトナム戦争が終わった次の年に
アメリカではトラヴィスは無冠に終わり、
アメリカンドリームを夢見るロッキーにオスカーは微笑む
それも
この作品らしさなのかなと
今になっては思います。
まあ観返してつくづく名作だなと感じました
ちょっと鬱っぽいとこもあるけどね(汗
んなわけで、
次回も映画館に行かない限りは古い作品です
では。
●Threads:chackn’s blog 縮小版