経済を語るなら数字は必要 | 中小企業診断士らっきんのブログ

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中小企業診断士らっきんが日本経済復活のための提言、中小企業診断士試験を分析、評論をします。意見等→rsv00104@yahoo.co.jp

前回の記事では、スタグフレーション下、経済環境が複雑化する中で経済政策の舵取りは以前より難しくなっているとはいえ、日本の財政破綻論だけはデタラメであり、否定しなければならないと述べました。というのは、日本がこのままでは財政破綻する危険性があるという前提がある限り、どんなに頑張ろうが道を誤って進むことになり日本経済の衰退は避けられないからです。というわけで、今回は財政破綻論のデタラメを追究します。いつも通り、経済学とか難しいこと抜きにしても論理的に見てみればおかしいということを発見していくスタイルでいきます。経済に詳しくない方でもデタラメを見抜く力を養ってもらうのが本ブログの目的ですから。

前回紹介した記事の下記の部分について、デタラメさを解明していきましょう。

 

 

「日本は、国債と借入金現在高が1200兆円以上という借金大国です。しかも現状では、国は、借金を借金で返している詐欺のような資金繰りをしています。この巨額の借金を処理できないことが激しい円安を招いている一因。国の借金が膨らみすぎれば、どこかで市場の信用が失われ、国債と円が暴落し、モノの値段が高騰する、ハイパーインフレが懸念されます」

 

ポイントは、言葉の定義をしっかり行うこと及び数字で語ることの2点です。おかしな点は以下の4つ。文章自体は短いのにこれだけ突っ込みどころ満載の内容を書ける著者の才能にある意味脱帽ですが、とにかく言いたいのは経済を語るなら数字で語れということですね。

①日本は、国債と借入金現在高が1200兆円以上という借金大国

②巨額の借金を処理できないことが激しい円安を招いている

③国の借金が膨らみすぎれば、どこかで市場の信用が失われ、国債と円が暴落

④モノの値段が高騰する、ハイパーインフレが懸念されます

 

①日本は、国債と借入金現在高が1200兆円以上という借金大国→日本が借金大国というなら、一国全体で借金が多すぎて債務超過に陥ってないといけません。で国のバランスシートみると、純資産は黒の部分で491.8兆円で借金どころか資産超過になっていますが。

この資産超過額が多いのか少ないかは経済学的に考えないといけないので省略しますが、資産超過になっている時点で借金大国と呼ぶのは、どう考えても間違いということになるのではないでしょうか。著者は、日本全体ではなく日本政府(グラフでは赤の一般政府)の借金が多いと言っているのでしょうから、日本ではなく日本政府と書くのが適切でしょう。その上で、日本政府が借金が多くて債務超過にはなっているから、借金大国と呼べるのかどうかは各自で判断することかと思いますが、そこまで問題視する必要があるのでしょうか。

(三橋貴明HPより)

 

②巨額の借金を処理できないことが激しい円安を招いている

③国の借金が膨らみすぎれば、どこかで市場の信用が失われ、国債と円が暴落→巨額の借金、国の借金が膨らむことが円安や市場の信認低下につながっているかどうかというのが論点になりますが、ここではまず日本政府がどれくらい巨額の借金を抱え、国の借金がどれくらい膨らんでいるのかを他の国と比較してみてましょう。今回は米国ドルに対しての円安を言っていると思いますのでアメリカと比較してみます。

(池戸万作のxより)

どう見ても日本よりアメリカの方が激増していますね。しかも、アメリカの増え方はコロナ禍以降、すさまじい。にもかかわらず、アメリカはドル高、日本が円安に傾くのはなぜなのでしょうか。少なくとも、借金の問題で市場の信認低下、円安になっているのではなく、もっと影響のある他の要因があることは誰でもわかるはず。にもかかわらず、日本政府の借金が円安の原因であるかのような書きぶりはデタラメと言わざるを得ない。

 

④モノの値段が高騰する、ハイパーインフレが懸念されます→円安でモノの値段が高騰することについては、妥当かもしれませんが、ハイパーインフレというおどろおどろしい言葉を使うのは、読者に恐怖感を与えるのが目的ではないかと勘繰ってしまいますが、ハイパーインフレとはどのような事態かをわかって書いているのでしょうか。

 

辞書によると、物価だけが短期間に数倍、数十倍に騰貴することとあります。現状、物価高とはいえ、2%程度の物価上昇率の日本で物価が一気に20ー30倍になる、例えば今、全国チェーンの牛丼屋の牛丼が400円台から1万円ぐらいに上昇することはあり得るのでしょうか。あり得るかどうかは各自の判断に委ねるとして、著者はハイパーインフレになる恐れがあると言うなら、ハイパーインフレというおどろおどろしい言葉を使わずに、物価が一気に数十倍になる等、数字で物価上昇を表現するべきではないでしょうか。