(えきだし)

一年の終わりにもなると年内の譲渡所得を調整するために損益を確定することがある。

益出しの対義語は損出しとなるが、2023年の株式市場は上昇で終えられそうなので益をメインに記載することとする。

個人が上場株式を売却する場合、分離課税となり他の所得と合算することはないため株式を売却したからと言って所得税の税率が上がることはないし、もちろん株式で給与収入を上回る多額の損失を出したからといってサラリーマンが住宅ローンの審査に落ちるといったこともない。益出しは主に保有している上場株式等の損失を確定した投資家が、損益通算を行う目的で実施される。

 

損益通算の例

  1. 個人投資家が手数料を含めて100万円で上場株式等Aを購入する。
  2. 上場株式等Aが値上がりして手数料を含めて150万円で売却した。
  3. 個人投資家が手数料を含めて100万円で上場株式等Bを購入する。
  4. 上場株式等Bが値下がりして手数料を含めて50万円で売却した。

上記の例で、2023年12月現在の税制では上場株式等Aの値上がり益50万円について20.315%の税率で譲渡益税が課されることになり10万円程度を納税する必要があるのだが、同じ年に行った売買の損益は合算することが可能なので、上場株式等Bの損失と相殺することができる。

 

源泉徴収ありの特定口座で取引している場合は税金の計算を金融機関が自動的に行ってくれるため、上記のように損失を計上している場合は納税するはずだったお金が源泉徴収されずに口座に入金することになる。

 

年末ともなるとリテール営業隊は当年の損益を洗い出して、顧客に連絡をすることになる。

年内に既に損失が出ている場合は含み益のある銘柄を売却しても譲渡益の税負担が少なくなり、これをお年玉などと言うことでなんとなく得した気分になってもらうこともできる。売買手数料も得られるわけで営業担当者もニッコリのwin-winイベントといえる。一方で損失の発生源は過去の提案結果であることも多く、年末のドサクサに紛れて益出しを提案した結果顧客が逆上する場合もあるため注意が必要である。