キンシコウ(金絲猴)とは、哺乳綱霊長目オナガザル科シシバナザル属に分類される、実在するのにファンタジー感が強すぎる霊長類である。
初見で「えっ、CG?」「どこのRPGの聖獣?」と二度見すること請け合いのルックスを持ち、その神々しさから神の使いや幻獣と勘違いされてもおかしくないレベルの存在感を放っている。
概要
和名: キンシコウ(ゴールデンモンキー)
学名: Rhinopithecus roxellana
生息地: 中国中西部(四川省、陝西省、甘粛省など)の山岳地帯
名前の「金絲(きんし)」は金色の絹糸、「猴(こう)」はサルを意味する。つまり「金ピカの毛並みを持つサル」という、そのまんまだが非常に雅なネーミングである。
熱帯のジャングルに住むイメージが強いサルの中では珍しく、標高1,500〜3,400メートルというガチの寒冷地に適応した種。冬には雪がドカドカ降るような過酷な環境で暮らしている、なかなかのハードボイルド・モンキーである。
特徴
キンシコウを語る上で絶対に外せないのが、その圧倒的なビジュアルの暴力(誉め言葉)である。
輝く黄金色の体毛
特に大人のオスの背中から肩にかけては、太陽の光を反射してキラキラと輝く美しい黄金色の長い毛に覆われる。寒冷地で生き抜くための分厚いダウンジャケットのような役割を果たしているのだが、それにしてもゴージャスすぎる。
鮮やかなターコイズブルーの顔
黄金の毛並みだけでも目立つというのに、顔面は抜けるような青色をしている。目の周りや口元が特に青く、まるで特殊なペイントを施したかのような鮮やかさ。サルなのにやたら神秘的で、森の中で遭遇したら思わずひれ伏してしまいそうなオーラがある。
体より長い尾
樹上生活に完全に適応しており、バランスをとるための長い尻尾を持つ。これもまた優雅さに拍車をかけている。
【シシバナザル】としての進化
彼らは分類上「シシバナザル(獅子鼻猿)」というグループに属する。文字通り、鼻が極端に短く、鼻の穴が前(というより上)を向いているのが特徴だ。
「え、雨降ったら鼻の穴に水入らない?」と心配になる形状だが、これには切実な理由がある。彼らが住むのは極寒の高山地帯。もし普通のサルのように鼻が出っ張っていると、真っ先に凍傷になって鼻モゲラ状態になってしまうからだ。
極限環境に適応するための進化なのだが、結果的にそれが顔の愛嬌と異世界感をマシマシにしている。
生態
超巨大なコミュニティ
基本的には1頭のオスと複数のメス、その子供たちからなる「ワンオス・マルチメス」の小さな群れを作るが、これらが集まって数百頭規模の超巨大な群れ(バンドと呼ばれる)を形成することもある。厳しい冬を乗り越えるために、みんなで身を寄せ合って「猿団子」を作り、物理的に暖め合うのだ。尊い。
仙人じみた食生活
主に樹上で生活し、木の葉や果実などを食べる草食傾向の強い雑食。特筆すべきは冬場の食生活で、エサが極端に少なくなる雪山では、木の皮や地衣類(コケみたいなやつ)、松葉などをかじって飢えをしのぐ。
黄金の衣を纏い、高山の雪景色の中で松の葉をかじるその姿は、もはや修行中の仙人である。
人間との関係
その美しすぎる毛皮が災いし、過去には乱獲の対象となってしまった。さらに、農地開拓や伐採による森林破壊が追い打ちをかけ、生息数は激減。
現在はIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危惧種(EN)に指定されている。
中国国内では「国家一級重点保護野生動物」に指定されており、ジャイアントパンダに次ぐ国宝級のVIP待遇で厳重に保護されている。
かつては日本の動物園(東山動植物園やズーラシアなど)でも日中友好のシンボルとして飼育・展示されており、その美しさから絶大な人気を誇っていた。しかし、繁殖のための貸与契約終了などに伴い全頭が中国へ帰国したため、現在日本国内で生きたキンシコウを見ることはできない。無念。
文化・創作における扱い
「孫悟空」のモデル説
中国の古典奇書『西遊記』の主人公、斉天大聖・孫悟空。彼のモデルはキンシコウなのではないか、という説が広く知られている。
実際のところ、学術的にはアカゲザルなどのマカク属が有力視されているのだが、キンシコウの「黄金の毛」「神々しいオーラ」「中国の険しい山に住む」という要素があまりにも孫悟空のイメージ(特に京劇などで描かれる華やかな姿)にピッタリすぎるため、「もうキンシコウがモデルってことで良くない?」と支持されがちである。
そのファンタジー感あふれるビジュアルから、ゲームやアニメのモンスターデザイン、あるいは神獣や精霊のモチーフとして、クリエイターのインスピレーションを刺激し続けている。
余談・締め
自然界の生物は、過酷な環境に適応するために合理的で無駄のない進化を遂げるのが常である。
しかし、時折このキンシコウのように、「進化の方向性は合ってるはずなのに、どうしてそんなにデザイン性が高くなってしまったんだ?」と言いたくなるような、まるで神様やデザイナーが本気を出してモデリングしたとしか思えない奇跡の生物が誕生するから面白い。
もし将来、中国の保護区などを訪れる機会があれば、ぜひこの実在するファンタジー生物の姿を目に焼き付けてほしい。
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