厚労省の生きづらびっとで、質問紙法の性格診断があったので、やってみた。質問の意図するところ、どんな回答をすれば、どの領域でどう評価されるか、だいたい分かってしまうので、かなり己に甘めに加減した。
結果は、「ギリギリタイプ」だと。自分に対する期待値が高くて、頑張っても頑張っても、しんどいというタイプ。そんなに自分を追いつめていたのだろうか。それでは、きっと他者に対しても要求水準が高すぎて、疎まれるだろうな、穏やかな人を演じているつもりが、まだまだか・・・と苦笑する。
さて、水島広子(精神科医師。元衆議院議員)である。YouTubeを観たら、まあ、普通のおばちゃんであり、それほどトークにキレはない。複数の著書内で何度も同じようなことを書いているが、身内の死については、喪の作業に“普通は”半年、自分は父と仲が良かったので一年かかった旨、甘っちょろいことを言っていた。
「自己肯定感、持っていますか?」を中心に「『むなしさ』を感じたときに読む本」、「『怒り』がスーッと消える本」などを概読した。
・×自分の好きなところを探す→条件付きの承認になるのでダメ。これは他の方も同様の指摘があり、理解できる。
・相手の言動、さらには相手の存在をまるごと受け入れる→現実にはなかなかねぇ・・・
・「何か事情があるのだろう」と、相手の頑張って生きていたこと自体をリスペクトする。→これがこの本のキモなのだが、あまりにあいまいで説得力が弱い。
寛容になれと言うことはたやすい。わたしは長年、ひとの情報を分析、評価する仕事をしてきた。その悪癖が抜けないと言ってしまえば身も蓋もないが、相手が自分にとって、何か気に入らない言動を取った際、「何か事情があるのかも」程度の漠然とした流し方はできない。
遺伝を含めた医学・生得的要因、乳幼児からの生育史、原家族を含めた家庭環境、交友関係、学業や職業、交友関係の影響など社会的要因、それらの中で醸成されてきた認知特性など心理的要因、これら多岐にわたる情報を関連づけ、重みづけして分析・評価しない限り、「まあ、そんなこともあるよね」と、寛容な推測によって現実をふんわり納得することなどできないのである。
水島氏自身も、努力しないひとは、「よくよく聴いてみて」、「そうした事情を知ると」、努力できない(ように見える)理由があるのがわかると記している。対人関係療法の専門家にして、そんなレベルなのであるから、普通のひとが対人関係で無条件に寛容に接することは、仏様レベルの広い心の持ち主でないと難しかろう。
・他人に対する決めつけや評価を手放す→これも難しい。相手の領域(居場所)を尊重するという姿勢は分かる。相手がこちらをどう思うかはコントロールできない。その通りであるが、これは相手に対して何も期待するなということにならないか?
水島氏は、お人好しというか、性善説に基づいた考え主体のように見える。
・むなしさは、自分の中からやってくる癒しでしか、手放すことはできない。外部からの評価(結果)に目を向けている限り、むなしさのコントロールは他人に委ねられてしまう。→その通りだと思う。
・何のために生きているか分からないのは、現在が空洞化していること。未来の不安に心を占拠されてしまっている。不安の原因は「今」にはない。「今」に集中すべき。→その通りだと思う。
・身体を動かすのに集中せざるを得ない状況において、「今」とつながることにより、孤独を感じない。→同じような指摘を他にも読んだ。特に心肺機能を追い込む強度のサイクリングは良いと改めて思う。クライマーに生きづらさを抱えている人が多いのは分かる。
・怒りは結果であって、抑えつけるほど自分の中に溜まっていく。抑えこむのではなく、コントロールすること。→原因の除去など、そもそもコントロールできないから怒りだと思うのだが・・・。
他の人の著で、マイナスの感情は自分を守るためにあるので、感謝して手放そうというのがあったが、あまり一度にいろんな教えを吸収できない。防衛機制のプラス面は、また別の機に考察したい。
大島信頼氏(自称カウンセラー)の本もたくさん並んでいる。彼はちょっと変わっていて、「嫉妬に苦しむのは、実は相手があなたに嫉妬しているのである」とか、過去を変える心理ゲームをしてみようとか、いわゆる王道のアプローチで効かない場合に、参考にしてみるのも面白い。
最後に藤野智哉氏(精神科医師)の「あきらめると、うまくいく」を読んで、しみじみとした気分になる。
あきらめるとは、今の自分を受け入れ、執着を手放すこと。撤退してもいい。後ろ向きになったとしても、あなたがいま向いている方が前なのだから。屁理屈でもいい。理屈なんて人が勝手に決めたものだから・・・。
まだ若い医師だが、深みのある、真に優しいことばだと思った。
かなしみ続けるということは、執着を手放せないということなのだろうか。少し違う気がするが、今回はここまで。