独立人事業務請負人(人事IC)の木村勝です。
アベノミクス成長戦略において女性の活躍推進は大きな柱であり、政府も2020年までに女性管理職比率を3割に増やすことを目標に掲げて各種施策を講じ始めています。
こうした動きを受けて、女性管理職を増やすために、数値目標を設定する企業も増えています。
朝日新聞2014年7月8日朝刊記事によると、
・日立製作所では、2020年度までに8年間かけて、国内を中心に女性管理職を2.5倍の1000人に増やす目標
・三菱重工業では、2020年までに管理職に就く女性を今の3倍の約250人に増やす目標
等々です。
また、以前も書きましたが、今年は野村信託銀行、みずほ銀行、三井住友銀行など大手金融機関を中心に女性役員就任が話題になりました。
今回の女性役員就任は、ちょうど1986年施行の男女雇用機会均等法前後に入社した雇均法第一世代と呼ばれる入社世代が役員就任時期に入ってきたことによるものです。
マスコミ報道を見ていると、”女性の大抜擢!”という風に見えがちですが、”(内部的には)ちょうどこの時期の入社が役員昇格時期に到達し、同世代(男女問わずに)の中から頭角を現した方が役員に予定通り昇格した”という当たり前の人事だと思いわれます。
1986年入社というと、現在50歳前後でまさに仕事の面でも脂の乗り切った時期ですが、一方で今後考えなければならない課題としては、女性総合職のセカンドキャリア対応だと思います。
男性でも女性でも同じですが、ホワイトカラーの管理職層については、ある一定の年齢で役職定年となり、(大企業であれば)関係会社やあるいは資本関係のない求人企業へ転籍をすることが管理職キャリアの一つの流れになっています。
雇均法第一世代もまさにこれからこうしたキャリア変更の年代にさしかかってきます。
しかしながら、各企業の人事部も男性のキャリア開発は経験豊富ですが、女性総合職のセカンドキャリア支援はなかなか経験がないところが多いような気がします。
セカンドキャリアについては、今までの経験・スキルが活用できる中小企業への転出が中心となりますが、こうした企業で求められる人材はスペシャリストでありながらなんでもこなせるジェネラリスト的な人材です。
大企業では、人事部、経理部、総務部、広報部など部署が分かれ、それぞれの分野で専門キャリアを積んでいくことが通常のキャリアコースですが、中小企業においては、総務部で人事も経理も総務も広報も一人三役、四役とこなすことが当たり前になります。
今までの女性管理職はどちらかというと専門部署での管理職昇格が多いと思いますので、候補者の専門スキル・経験と中小企業が求める人材とのマッチングは男性以上に難しい面があるような気がします。
また、ダイバーシティ的風土には大企業と中小ではまだまだ温度差のようなものがありますので、違う企業で今まで培ってきた本来の実力を発揮するのもハードルが高いです。
女性役員就任というコースだけでなく、「女性管理職⇒中小企業の管理職転出、そこでさらに活躍」というモデルが今後多く出てくることが女性活躍の条件だと考えます。
雇均法世代が多くの企業で役職定年を迎える55歳まであと5年程度。
女性管理職のセカンドキャリアの仕組みづくりも今後の女性活躍推進のための重要な条件整備の一つと考えます。