独立人事業務請負人(人事IC)の木村勝です。
今、日経朝刊経済教室では、日本企業の国際競争力をテーマに特集が組まれています。
昨日は、早稲田大学法木秀雄教授(法木先生は、もともとキャリアのスタートは日産自動車の人事部から開始された方です)による自動車産業の国際競争力について、そして本日は東京大学ものづくり経営研究センター吉川良三特任研究員による電機産業の国際競争力に関する論考です。
いずれの先生も実際の民間企業のものづくり現場の豊富な経験をお持ちの先生方ばかりで、その提言は非常に参考になります。
今日ご担当の吉川先生は、日立製作所を経てサムスン電子常務をつとめられていた方で、まさに電機業界の熾烈なサバイバル競争の第一線で活躍されていたキャリアをお持ちです。
論考では、日本の電機産業の低迷をものづくりの観点から見ると「グローバル化」と「デジタル化」にその真因があると指摘しています。
詳細は日経記事をお読みいただければと思いますが、日本の産業の中で熾烈な国際競争の先陣を切ってきた電機産業ですら、この流れに追随しきれずに韓国サムスン等の後塵を拝している現状が説明されています。
ここでいうグローバル化とは、生産拠点を海外に移転するだけの「国際化」とは異なり、「市場として期待される地域に工場や拠点を置き現地の文化やニーズにあった製品設計をする『地域密着型ものづくり』という定義です。
多種多様な消費者ニーズを抱える新興国市場には従来のような国内・欧米市場をターゲットとしたものづくり戦略ではもはや太刀打ちできないことを指摘されています。
デジタル化に関しては、日本がお家芸としてきた「すりあわせ」技術すら、もはやデジタルで可能となっているとの指摘は、実際サムスン電子で役員をつとめられていた方の発言だけに重みがあります。
ものづくりを「もの」と「つくり」に分けて考える概念提示も新鮮です。
「もの」は、「ワクワク感」を伴う付加価値づくりであり、「つくり」は、この要求を具現化(生産)するのに必要な技術であり、この2つが合わさったものが「ものづくり」であるという概念です。
また、この「ものづくりには2つの製造形態が存在すると指摘しています。
一つは、「もの」も「つくり」も自前で考えて製造する形態(垂直統合型)
もう一つは、「もの」を考え「つくり」を外部に委託し製品を生み出す形態(水平分業型)
です。
この概念は人事などの間接業務にも当てはまると思います。
「もの」は、人事部の本来機能である付加価値創出(モチベ-ションアップ、タレントマネジメント等)であり、「つくり」はその制度オペレーションです。
日本の企業の事務領域は、製造部門に比べると、仕事の標準化も遅れているため「もの」への人材投入も不十分ですし、「国際化」もほとんど着手されていませんので、職種的にみると国際競争力に欠ける職種だと思います。
当方以前はBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)の会社におりましたが、その感覚でいえば、少しのデジタル化(徹底した業務標準化&ITC等)であっという間に間接業務の海外移転は可能です。
日本の産業の中でも国際競争の熾烈な競争をしてきた電機産業ですらこうした危機にある今、日本国内をその相手として生きてきた産業(あるいは職種)はこれからその生き残りは厳しくなると思います。
自分の業務の「もの」は何か? 常に頭に入れながら仕事をしていく必要を記事を読んでいて感じた次第です。