独立人事業務請負人(人事IC)の木村勝です。
2014年6月6日、日経朝刊に「フレックス制、労働時間不足の場合、有休を使い給料減回避」という小さな記事が出ていました。
出所は不明ですが、昨年6月の「日本再興戦略」にて、「企画業務型裁量労働制を始め、労働時間法制について--本年秋から労働政策審議会で検討を開始する。ワーク・ライフ・バランスや労働生産性向上の観点から、総合的に議論し、1年を目途に結論を得る」とされていますので、労働政策審議会の下の分科会である労働条件分科会での論議を受けての内容だと思われます。
改正案は、フレックスタイム制において月間の労働時間が所定定時間に満たない場合に、年次有給休暇をその不足分に充当することで給与減額をしない仕組みをつくるという内容です。
現在でもある一定時間は翌月に不足分を繰り越すことができますが(オーバー分=残業分については繰り越しはできませんが)、残業が少ない職場などでは、意外にこの充当に苦労しているケースもあるかと思います
どうしても昨今話題のホワイトカラーエグゼンプションに目が行きがちですが、まずは今回の改正案のようにこうした既存の制度を有効に活用できるような環境の整備から進めていった方が現実的だと思います。
ホワイトカラーエグゼンプションの場合、労働時間と成果がリニアにはリンクしないという前提で、労働時間規制の適用対象外とするものですが、論議の中で想定されているのは、短い時間で成果を上げるケースの方がイメージとして前面に出ているような気がします。
要求される成果の水準は、次々と高くなりますので、短い時間で達成可能なケースばかりではなく、逆のケースも増えてきます。
また、以前の記事でご紹介させて頂きましたが、労働時間の長い人ほど「上司は長時間残業を前向きに評価している」と自分なりに解釈しているという結果が出ているという調査がありました。
こうした意識は、確かに職場にあると思います。
働く側の意識がそうであれば、ホワイトカラーエグゼンプションが想定している労働時間と成果を切り離して、成果が上がったからさっさと帰る!ということにはなかなかならないような気がします。
そうであれば、例えばコアタイム無しのフレックス制度+今回の改正を利用して、
”業務の繁閑や進捗を自ら判断してメリハリをつけて早く帰るときは帰る”
”不足分はどこかで無理に埋め合わせることなく、(自らの判断で)使いきれない有休を充当して日々のワークライフバランスの実現を図る”
といった方向が現実的な気がします。
フレックスタイム制を導入して始終業を個人にゆだねているにもかかわらず、例えば上司が ”何で○○は朝いないんだ!” とか ”なぜ○○は早く帰ったんだ!”というような職場環境のところには、ホワイトカラーエグゼンプションの導入は、まだまだ早すぎます。
繰り返しになりますが、まずはこうした既存の制度を有効に活用できるような環境の整備から進めていった方が現実的だと思います。